雲と風と の商品レビュー
伝教大師最澄の生涯を描いた歴史小説です。 幼少のころから修行時代、桓武天皇との邂逅、唐への旅、空海との確執が、時代考証とともに語られます。 空海と比べると、最澄の最後は、なんとも物悲しいですが、鎌倉仏教に与えた影響は多大なるものがあります。 最澄の生きざま、平安仏教の概略がよくわ...
伝教大師最澄の生涯を描いた歴史小説です。 幼少のころから修行時代、桓武天皇との邂逅、唐への旅、空海との確執が、時代考証とともに語られます。 空海と比べると、最澄の最後は、なんとも物悲しいですが、鎌倉仏教に与えた影響は多大なるものがあります。 最澄の生きざま、平安仏教の概略がよくわかりました。 読み応えがありました。
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「愚直」まじめでいい子な最澄。「有能」できる天皇の桓武。対照的な二人の運命の出会いを描いたリレー小説(半嘘) 最澄と言われたら、同時に空海も連想するものである。その空海に比べたら、あまりにいい子すぎる。マキャベリズム的に考えたら、最澄はリーダーに向いていない人間だろう。結果、桓武天皇というバックを失ってからの苦悩を見れば、そのようになっている。 逆に空海はあらゆるタレントを持ち合わせていて、機転を利かせて悪いこともできる人間だったんだろう。 最澄は純潔な人間だったけど、最期には天台宗を確立させた(死を以て、まさに命がけで)。そうして後世で大繁栄を見せるが、天台宗には次を担う偉人がどうしてたくさん生まれたのだろう。やっぱり権力と結びついたから名が売れたのかな。それにしても、比叡山の地は都の東北で、やはりただならぬ場所なんだろうなぁ…と感慨深い。 桓武天皇の記述が多いのはうれしい。日本史で習った「薬子の変」らへんはずっとイメージの湧かないままスルーしていたけど、これを読んで掴むことができた。安殿親王(平城天皇)のわがままっぷりも公家らしくて掴みやすい。 全体的に小説というよりは、砕けた歴史解釈本のような感じであった。軽い気持ちでは読めないが、途中挫折はせず読める本である。そういえば司馬遼太郎の『空海の風景』もこんな感じだったな。 桓武天皇の怨霊信仰を読んでいて、諡号の「武」についてなんか曰くがあったのを思い出した。東征や遷都と精力的に政治活動をした桓武に「武」という文字がつけられることはイメージ通りである。けれど、同じように「武」のつく、天武・文武・聖武とか皆、実権争いで恨みを買うようなことをしている人間なんだよね。壬申の乱、不比等の暗躍、長屋王の変…と権力の黒い影と戦った天皇たちを思い出さずにいられない。
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最澄についての小説。 『氷輪』と同様に、小説、というよりは永井路子さんの視点で、 最澄の人物像が語られる形式。 桓武天皇と最澄とのかかわりは、単に政治的な庇護関係ではなく、 魂からの親交であったとする見方が面白かった。
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