笑いと逸脱 の商品レビュー
さまざまな雑誌などに発表された著者の論文、エッセイ、インタヴューなどが収録されています。 インタヴューや、インタヴューを模した対談形式で著者の来歴を振り返った文章なども含まれていて、興味深く読みました。日本史を専攻し、大江匡房を卒業論文のテーマにえらんだ著者は、法制史もしくは社...
さまざまな雑誌などに発表された著者の論文、エッセイ、インタヴューなどが収録されています。 インタヴューや、インタヴューを模した対談形式で著者の来歴を振り返った文章なども含まれていて、興味深く読みました。日本史を専攻し、大江匡房を卒業論文のテーマにえらんだ著者は、法制史もしくは社会経済史の観点にもとづく研究方法にあきたらず、文学史や美術史をも包括する「精神史」の発想につながるような志向を当初からいだいており、そうした問題意識が著者をその後の知的遍歴へといざなったことが語られています。 「南方熊楠と文化人類学」という論考では、現代の研究者たちが南方の博識に敬意を示しつつも遠ざけるといった態度をとっている理由について考察がなされています。「現代の学者は、なぜこれを取り上げるのかということを説明して、納得させるものでなかったら、文章を書き始められないと思う。ところが南方の場合は、どんな小さな事例でも、背後に意味があるという確信があるわけですから、なぜそれを取り上げるかということについて、何ら説明をしない」と著者はいい、そのうえで南方の比較の方法が、「現在我々のもっている学問のやり方の欠けた部分を補う力を持っている」のではないかと語られています。 かと思えば、アフリカで車の運転をしているときにブレーキが効かなくなり、砂山に突っ込んで助かったというエピソードが収められていたりと、多岐にわたる内容の文章が含まれているので、たのしんで読むことができました。
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なんだろう、この隔世の感は、と思うような内容。あたらこの博学を、というのが率直な印象。生まれる時代が違えば、もう少し志ある学果を残せただろうに。
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