ミカドと世紀末 の商品レビュー
『天皇の影法師』『ミカドの肖像』の著者である猪瀬直樹と、「中心と周縁」理論の提唱者であり『天皇制の文化人類学』の著者である山口昌男の対談です。 天皇制の内部に「中心と周縁」の構造が抱え込まれているという指摘から始まって、堤康次郎と五島慶太という二人の人物を中軸に据えた日本におけ...
『天皇の影法師』『ミカドの肖像』の著者である猪瀬直樹と、「中心と周縁」理論の提唱者であり『天皇制の文化人類学』の著者である山口昌男の対談です。 天皇制の内部に「中心と周縁」の構造が抱え込まれているという指摘から始まって、堤康次郎と五島慶太という二人の人物を中軸に据えた日本におけるレジャーランドの歴史にせまっていくところは興味深く読みました。 後半は『ゆきゆきて、神軍』の検討に、多くのページが割かれています。野間宏の『真空地帯』の問題提起が知識人にとっての戦争問題をあつかっているのに対して、『ゆきゆきて、神軍』の奥崎謙三が体現しているのは、天皇制でさえもがそこに根ざしている日本の土着の思想のなかから、戦後天皇制の欺瞞を撃つような、いわば闇の論理であるという主張がつかみとられているように感じました。山口の発言に「責任を追及するスタイルとして、無責任のスタイルを使っている」ということばが見られますが、啓蒙的理性の光が差し込まない日本文化の深淵をのぞき込もうとする著者たちの対談に、スリリングな興奮をおぼえました。
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