評伝 永峯秀樹 の商品レビュー
明治期に西洋文化を日本に取り入れるために隆盛した翻訳書の訳者の一人・永峯秀樹の伝記。 まず、文章が読みづらい(読解力が低下している?)。この本の核心部分(精力的に翻訳に励んだ時期)が特に分かりづらく、時間軸的に話が行ったり来たり、同じ時期の説明でエピソードや出来事が後出しされる...
明治期に西洋文化を日本に取り入れるために隆盛した翻訳書の訳者の一人・永峯秀樹の伝記。 まず、文章が読みづらい(読解力が低下している?)。この本の核心部分(精力的に翻訳に励んだ時期)が特に分かりづらく、時間軸的に話が行ったり来たり、同じ時期の説明でエピソードや出来事が後出しされるので、前後関係が整理しきれない。ゆえに、なぜこの核心期に訳業が集中してなされたのか、「この時期の文化功労者の一人」と言われるほどの偉業なのかどうか、よく分からない。それから、著者の年齢によるのか旧漢字の使用も一因。 とは言え、原著一冊を丸々訳す現代と違って(著作権の関係もあろう)、纂訳・抄訳のセンスの妙は何となく伝わる。特に纂訳は「島国根性を打ち破る」「女は社会の中心」という永峯の開明的な思想に裏打ちされているように思える。また、訳書の分野が政治経済から物理、アラビアン・ナイト、果てや家政学まで至るのはこの時期ならでは。 この意味では訳書でなく、本人著作の「『人と日本』解説」の項は永峯・著者の筆とも圧巻で、むしろここがクライマックス。マクロな状況(時代)把握と現代にまで通じる見通す力は何たることよ。 これだけの見通す力があるのに、この後フレノロジー(いわゆる骨相学)研究に転じたのもよく分からない。心性を重んじる永峯なので、日本心理学史的に未成熟な時代だったことが影響しているというか何というか…。
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