アメリカ の商品レビュー
ハリウッド、ミッキーマウス、マクドナルドなど、アメリカの点景を活写しながら、アメリカ人の「陽気な孤独さ」を考察
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これは1990年に発行され、今は文庫本にもなっているが、発行当時、会社の元同僚が「おもしろかったからあげるね」とプレゼントしてくれた1冊。 そのころの私は10代の頃から抱き続けていたアメリカに対する憧れはあったものの、まだ一度もアメリカの地を踏んでいなかったし、きっと憧れのまま終...
これは1990年に発行され、今は文庫本にもなっているが、発行当時、会社の元同僚が「おもしろかったからあげるね」とプレゼントしてくれた1冊。 そのころの私は10代の頃から抱き続けていたアメリカに対する憧れはあったものの、まだ一度もアメリカの地を踏んでいなかったし、きっと憧れのまま終わるだろうと思っていた。 だからなのか、この本を開くのに躊躇していた。 これを読んでしまうことで、アメリカに対する憧れがいっそう強まって歯止めが利かなくなったらどうしようという危惧と、読んでしまうことによって憧れが壊れてしまうのではないかという不安。 そして、ページを繰ることなくそのまま私とともに渡米した1冊だった。 アメリカ生活も丸4年が来ようとする今、ふと手にして読んでみようという気になった。 446ページの長編だが、読み始めたらまさに一気だった。 そして今読んで良かったと思う。 おそらくアメリカの地を踏まないままで読んでいたら、ここに書かれていることは理解できない部分が相当あったと思う。 また、単なる旅行者であってもやはり理解できなかっただろう。 アメリカで暮らし、アメリカの風に吹かれ始めてから、それまでの憧憬だったアメリカは絵葉書の中の静止した画像になった。 どこまでも抜けるような青空と陽気な人々の、天真爛漫な笑顔は変わらない。 でも、そこから受け止めるのは、限りない寂しさ。 藤原新也氏はそれを“寂しきオープン・マインド”“フレンドリーなる孤独”と表現する。 この本を読みながら、頭の中で流れていたのはEaglesの“Hotel California”だった。
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