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フランス革命を考える の商品レビュー

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2023/12/29

フュレはアナール学派第三世代に属するフランスの歴史家だが、本書でソブールやマチエに代表される正統派革命史学を徹底的に批判する。フィレが依拠するのはトクヴィルの『旧体制と大革命』だが、革命の前と後で革命史学が言うような歴史の「断絶」はないとし、むしろその「連続性」を強調する。革命は...

フュレはアナール学派第三世代に属するフランスの歴史家だが、本書でソブールやマチエに代表される正統派革命史学を徹底的に批判する。フィレが依拠するのはトクヴィルの『旧体制と大革命』だが、革命の前と後で革命史学が言うような歴史の「断絶」はないとし、むしろその「連続性」を強調する。革命は封建制を打破して資本主義を齎した「原因」なのではなく、革命に先立って既に進行しつつあった資本主義の「結果」であると言う。これはフランス革命史観のコペルニクス的転回だ。 貴族は資本主義に敵対などしておらず、官職売買を通じてブルジョワとの境界が曖昧になっていた新興貴族を担い手として、資本主義はフランス社会に浸透していた。そうした貴族化したブルジョワは行政官僚の供給源として絶対王政の権力基盤の一角を占めてもいた。新興階級としてのブルジョワに対する反動勢力としての貴族という二項対立図式は、革命史学の作り上げた神話に過ぎない。革命は急激な経済的変革を望まない農民の不満を原動力としてもいた。結局、革命によって歴史の進行は大きく変わることなく、破壊と混乱の後にボナパルティズムが出現した。ここに絶対王政が推し進めてきた中央集権的行政国家が完成する。 正統派革命史学には歴史の変革主体としてのブルジョワへの過剰な思い入れ、さらにはブルジョワ革命の後に続く第二の革命としてのプロレタリア革命への希望が重ね合わせられていたと言える。フランス革命は来たるべき共産主義革命の前哨戦として解釈され、正当化されてきたのだ。フュレが批判するのは、こうした未来の特定の目的へと収斂するプロセスとして革命を位置付ける歴史の目的論的解釈である。このことはフィレがその革命理解の多くを負うトクヴィルにさえ当てはまるという。トクヴィルが「自由」の担い手として専制権力への対抗勢力と考えた貴族は、「当為としての貴族」であって現実の貴族ではないと手厳しい。いずれにせよフィレが企図したのは、未来の目的による歴史の歪曲から歴史の事実を救出することだ。 原著の出版は1978年だが、共産主義革命への情念の最後の表出であった五月革命(1968年)から10年、フランス革命200周年に先立つこと11年、革命神話顕揚の動きに先手を打つかのように世に問われた。邦訳が出たのは1989年、革命200周年の時だが、この年ベルリンの壁は崩れ、2年後ソ連体制が崩壊する。それからさらに四半世紀が過ぎた。本書の歴史的役割もようやく終わりを告げたと言ってよいだろう。

Posted byブクログ

2017/02/21

【小倉孝誠・選】 経済構造や階級的な葛藤という視点から革命を捉えるマルクス主義史学に対して、革命は何よりもまず政治文化の刷新だったと主張する。フュレの著作には批判も多いが、その後の革命史学に及ぼした影響は大きい。

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2013/08/02

当時主流であった「ブルジョワ革命」という規定を疑問に付し、トクヴィルの『旧体制と大革命』での行政制度の連続という分析とコシャンによるジャコバン主義分析からインスピレーションを受け、マルクス主義的フランス革命解釈を完全にひっくり返した著者の論集。むろん、マルクス主義史観をとるすべて...

当時主流であった「ブルジョワ革命」という規定を疑問に付し、トクヴィルの『旧体制と大革命』での行政制度の連続という分析とコシャンによるジャコバン主義分析からインスピレーションを受け、マルクス主義的フランス革命解釈を完全にひっくり返した著者の論集。むろん、マルクス主義史観をとるすべての革命研究を否定するのではなく、ルフェーブルの業績などは大いに参考にされている。それにも関わらず、大革命によって全てが破壊され新たな時代が始まったという見方は、行政の連続性と共和国下でのその完成や、ジャコバン主義のイデオロギー批判によって破壊される。実証的でありながら、イデオロギー批判という側面を多分に有しており、コゼレックの『批判と危機』などとあわせて読むとさらに面白いだろう。

Posted byブクログ