市塵 の商品レビュー
ただの儒者ではない、政治の実践で真価を試されてこその学問だ。白石の自負と覚悟が伝わります。 権力の中枢にいることへの畏れと愉悦をともに感じる、そういう側面をそのままに描いても、俗人と映らないのは藤沢周平の筆力だと思います。タイトルどおり市塵の人になったときに、白石とともに重い荷を...
ただの儒者ではない、政治の実践で真価を試されてこその学問だ。白石の自負と覚悟が伝わります。 権力の中枢にいることへの畏れと愉悦をともに感じる、そういう側面をそのままに描いても、俗人と映らないのは藤沢周平の筆力だと思います。タイトルどおり市塵の人になったときに、白石とともに重い荷を下ろしたように感じました。 藤沢作品の長編ならではの魅力だと思います。
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所謂時代小説の面白さとは異なるため、20年以上積読扱いだった。本と人の出会いには、やはり時期があるのだと思う。あたかも、吉村昭の記録文学を読むかのようであった。 この作品は、時代小説家として世評の高い藤沢周平が、「折りたく柴の記」の著者新井白石を主人公に据えた、’90年「芸術選奨...
所謂時代小説の面白さとは異なるため、20年以上積読扱いだった。本と人の出会いには、やはり時期があるのだと思う。あたかも、吉村昭の記録文学を読むかのようであった。 この作品は、時代小説家として世評の高い藤沢周平が、「折りたく柴の記」の著者新井白石を主人公に据えた、’90年「芸術選奨」受賞作。 浪人から立身し、間部詮房とコンビを組み、六代将軍家宣の政治顧問として辣腕を振るった白石を、さまざまな文献を渉猟し、余すところなく描き出す。 綱吉時代の悪制の撤廃、朝鮮使節の待遇変更、政敵荻原重秀が行った金銀改鋳への弾劾等々。 幕政改革に挺身し、一時代を築いた白石も、将軍の死とともに、華やかな光彩に包まれた時代は終わり、やがては市塵の中へ・・・ 藤沢周平が描き出した新井白石の生涯。
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