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一戸直蔵 の商品レビュー

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2016/08/04

わが国における天文学の創生に多大な貢献をおこないながら、アカデミズムの中に居場所を定めることができず、野に下って日本における科学ジャーナリズムのさきがけとなる雑誌『現代之科学』を発刊した一戸直蔵の評伝です。 一戸が衝突することになった東京天文台長の寺尾寿について、著者は「明治ア...

わが国における天文学の創生に多大な貢献をおこないながら、アカデミズムの中に居場所を定めることができず、野に下って日本における科学ジャーナリズムのさきがけとなる雑誌『現代之科学』を発刊した一戸直蔵の評伝です。 一戸が衝突することになった東京天文台長の寺尾寿について、著者は「明治アカデミズム」という言葉で説明をおこなっています。彼は、お雇い外国人に代わって各部署に配置された日本人の研究者の一人であり、明治政府の官僚制度の一環を占めていました。これに対して、初等教育から帝国大学を経て科学者となった後続世代は「大正アカデミズム」と呼ばれ、一戸と寺尾の衝突は明治アカデミズムと大正アカデミズムの衝突としてクリアに説明されています。 立花隆以降、中野敏夫や竹内薫、東島和子など、ようやく日本にもサイエンス・ライターの活躍が見られるようになってきていますが、長い間欧米に比してこの国には優秀なサイエンス・ライターがいないと言われ続けてきました。その背景には、本書で論じられているような、アカデミズムとジャーナリズムの不幸な反目があったのではないかという気がします。

Posted byブクログ