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カント純粋理性批判の研究 の商品レビュー

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2024/05/05

カントの『純粋理性批判』の、とくに「超越論的対象」の概念について、先行研究の詳細な検討をまじえながら考察している研究書です。 カントの「超越論的対象」は、しばしば「物自体」と単純に同一視されることがあり、また「物自体」にかんしては、ヤコービの「物自体を仮定することなしにカントの...

カントの『純粋理性批判』の、とくに「超越論的対象」の概念について、先行研究の詳細な検討をまじえながら考察している研究書です。 カントの「超越論的対象」は、しばしば「物自体」と単純に同一視されることがあり、また「物自体」にかんしては、ヤコービの「物自体を仮定することなしにカントの体系に入ることはできないが、しかしそれを仮定してはカントの体系にとどまることはできない」という評言以来、カント哲学のつまづきの石とみなされてきました。本書はこの難問に正面から取り組み、カントの超越論的認識の性格についてのていねいな分析を通じて、「超越論的対象」の「トランスフェノメナル」なありようを解明しています。 さらにこうした著者の主張の下敷きになっている解釈として、『純粋理性批判』における超越論的認識が、カントの倫理学において主題的に論じられることになる「理性の自律」との密接なつながりが存在していることが明らかにされています。ただし、そうしたカント哲学全体に対する著者の解釈はたんに示唆されるにとどまっており、いまだ具体的には論じられていません。著者自身「まえがき」で、本書は「著者にとって今後も継続すべきカント研究の暫定的な中間報告を意味するものである」と述べています。

Posted byブクログ