三屋清左衛門残日録 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
先日読んでとても面白かった「高瀬庄左衛門御留書」が、この「三屋清左衛門残日録」に似ていると、数件レビューに書かれていたのでこの本を読んでみた。 隠居した、といってもまだ4,50代の主人公が、身の回りの相談事を解決していった結果、その裏にある藩の騒動をも解決していくストーリー。隠居の身であるが、若い女性に惚れられるというのも共通点で、たしかに似ているお話だった。(もちろんこの本の方が先に出版されている) しかし「高瀬庄左衛門御留書」と比べると、文量が多い割にストーリーの盛り上がりが弱く、結末も、問題は解決するものの、静かにしんみりと終わるので読後感もそれほどスッキリしたものではない。 例えば、料亭「桶井」の女将のみさと一度は男女の関係となるも、故郷に帰るみさを引き留めることはないし、密談目撃者の村の女「みさ」とも、とくに男女のはなしにはならない。そしてストーリーの肝心の部分である藩を揺るがす事件に対しても、たしかに清左衛門は貢献しているものの、中心人物とは言えない程度の役回りなので、読者としては物足りなさを感じた。 この本があった上で、それを今の時代の読者が楽しめるように別の作者が再構築したのが「高瀬庄左衛門御留書」なんだろうなと感じた。 余談であはるが、両著ともに隠居する初老の男性が、10〜30代の女性に惚れられるという「おっさんの理想」が描かれているのでフェミニストは読んで楽しくないかもしれない。この本には、清左衛門と同年代の同僚が18の女性を囲う件も書かれている。そういえば浅田次郎の「プリズンホテル」も近代なのに女性囲ってた。 なるほどこういう時代感に影響され、その価値観がいまだに残っているおっさんが、高級クラブで当然のようにホステスに入れ込んだり暴力振るったりするんだろう。 そういう意味で、これらの本は文学のふりして女性蔑視的「おっさんファンタジー」要素で読者を引き寄せている節もあり、近年のハーレムラノベに対してとやかく言う筋合いはないだろうと思う。
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かたや主君の用人となり栄達を遂げての隠居、かたやしがない年金生活者(笑)の身と、大きな違いがあるが、ともに一線を退いた共通の立場から、15年ぶりに再読。 藩の権力闘争その他、頼りにする人々からの要請に応え奔走する清左衛門の活躍と、そして彼の眼を通して著する自然の清爽な描写に、読書...
かたや主君の用人となり栄達を遂げての隠居、かたやしがない年金生活者(笑)の身と、大きな違いがあるが、ともに一線を退いた共通の立場から、15年ぶりに再読。 藩の権力闘争その他、頼りにする人々からの要請に応え奔走する清左衛門の活躍と、そして彼の眼を通して著する自然の清爽な描写に、読書の楽しみを満喫。 藤沢周平の作品は、どれも再読、再々読の価値あり。
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