夢をみた海賊 の商品レビュー
図書館から借りて読む。作者は理想郷を求める「海賊」孫二郎を主人公に据え、起きうるあらゆる逆風を彼に浴びせかけている。底からの深いうねり、耐えても報われるとは限らない理想。しかし孫二郎は(ネタバレになるので詳しくは語れないが)想像するだけでも恐ろしいような窮地をもくぐり抜けて、いや...
図書館から借りて読む。作者は理想郷を求める「海賊」孫二郎を主人公に据え、起きうるあらゆる逆風を彼に浴びせかけている。底からの深いうねり、耐えても報われるとは限らない理想。しかし孫二郎は(ネタバレになるので詳しくは語れないが)想像するだけでも恐ろしいような窮地をもくぐり抜けて、いや。くぐり抜けたとは言えない。心に深い棘を打ち込まれながらなおもがき、足掻き続けているのだ。彼の姿は雲間をさす光にも似ている。
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歴史は、勝利者の側から描かれ、敗者の真実の姿は闇に葬り去られる、というのは、なだいなださんの小説を書く基本スタンスなんだろうか。 この奔放で雄大な物語が事実であるかどうか。 たぶん、そこは重要ではないのだと思う。 いや、事実というものがそもそも何者であるか、なだいなださんはそこ...
歴史は、勝利者の側から描かれ、敗者の真実の姿は闇に葬り去られる、というのは、なだいなださんの小説を書く基本スタンスなんだろうか。 この奔放で雄大な物語が事実であるかどうか。 たぶん、そこは重要ではないのだと思う。 いや、事実というものがそもそも何者であるか、なだいなださんはそこを問いかけているのかもしれない。 最後に、ジョナサン・スウィフトを登場させるあたり、憎らしい仕掛けだ。 そうそう、事実とは何か、自由とは何か、こういったまじめな主題だけでなく、「間切りの孫次郎」、このキャラクター設定もなんとも魅力的で好き。 間切り、というのは、風に逆らって船を操るとき、逆風に対して斜めに、ジグザグに走行しながら、進む方法を言うのだそうだ。 間切りの孫次郎。 なんとも、小気味のいいキャラクターではないか。
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