夢の島 の商品レビュー
奇妙な物語へ引き込ま…
奇妙な物語へ引き込まれていく一人の男性の物語。経済成長を遂げた日本人の迷いが現れていると言えるでしょう・
文庫OFF
妄想代理人 文章に刷新的なところがない。昭和時代の小説に遍在した凡庸な情景描写つづり。 ページ数はうすいが、題材・内容に反して長い。 ヒロインは、単純化されたキャラクタ的魔性の女。しかも二重人格である。 しかし純文学に二重人格といふモチーフ、そしてこんな描写は精神医学的...
妄想代理人 文章に刷新的なところがない。昭和時代の小説に遍在した凡庸な情景描写つづり。 ページ数はうすいが、題材・内容に反して長い。 ヒロインは、単純化されたキャラクタ的魔性の女。しかも二重人格である。 しかし純文学に二重人格といふモチーフ、そしてこんな描写は精神医学的に今ではとうてい許されまい。 主人公の中年はこの二重人格の魔性の女に惹かれ、翻弄される。ふりまはされた男の破滅は紋切型だ。主人公の抑制のつくつかぬのはざまの唐突な性欲も出てきて、うんざりする。 全体的に膨張する東京都市を、夢の島といふ舞台からグロテスクにあぶりだす目的のはなしだ。そのためか、描写が丹念にねちっこく俗っぽい。 だから、主人公も建築会社の社員で、高層ビルの東京にあこがれて働いてきたといふ設定。しかし別に建築会社の社員でなくてもストーリーは動くので、あまり建築が活かせてない。 冒頭に1980年代の晴海での大規模同人誌即売会の様子があり、1981年からコミケが晴海の東京国際見本市会場でひらかれたことと合致する。 日野啓三はどうやら幻想文学で重要視された作家らしく、「日本幻想作家事典」でもわりとページが割かれてゐた。 しかし純文学としては埋没していくだらうと思はれる。
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文庫ではなく1986年の二刷り単行本 脚本家いながききよたか氏の薦めで、『抱擁』に続き読みました。 実に映画的な小説です。 東京のビル群、埋立地、黒のバイクスーツに身を包んだロングヘアーの女、横たわるマネキン、古倉庫、熱帯のような森、腐葉土に虫にヘビに、シロサギ、釣り糸 全て...
文庫ではなく1986年の二刷り単行本 脚本家いながききよたか氏の薦めで、『抱擁』に続き読みました。 実に映画的な小説です。 東京のビル群、埋立地、黒のバイクスーツに身を包んだロングヘアーの女、横たわるマネキン、古倉庫、熱帯のような森、腐葉土に虫にヘビに、シロサギ、釣り糸 全てが像を結び、一本の映画になるようでした。 衝撃的でもあり、魅力に満ちた物語の終盤は怖いのにページを早くめくりたくて仕方なかった。 主人公の境昭三の姿が今でもくっきりと目に浮かびます。 きっと林陽子の目にも、一生、彼の姿は消えずにいるだろう 古い本なので図書館で借りましたが、手元に置いておきたい一冊でありました。
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人生を中庸に生きてきた中年が、台場の埋立地、そこで出会う不思議な少女に惹かれていく話。 ディストピアと咽せ返る様な自然の鮮やかなコントラストが気持ち良い。白昼夢のような内容に、熱の籠った作者の筆が合わさり、特異性を感じた。短いボリュームに力強いインパクトを残す印象深い一作。
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古本も置いてある立ち飲み屋にて、友人の力説にほだされて購入。 これは文学における都市論である。 都市の見方を変えてしまった(スケールの変更というよりは、意味の変容だが)人間の物語。 この作品が書かれた当時の東京の姿はすでに存在しない。 それでも今でも通じる都市論になっていると思...
古本も置いてある立ち飲み屋にて、友人の力説にほだされて購入。 これは文学における都市論である。 都市の見方を変えてしまった(スケールの変更というよりは、意味の変容だが)人間の物語。 この作品が書かれた当時の東京の姿はすでに存在しない。 それでも今でも通じる都市論になっていると思う。 そして極めて文学的であることも付け加えておきたい。 処分日2014/09/20
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最初は、何となく自分を探す孤独な中年男性が若い女性に惹かれて、というありがちな話かと思った。そのベタな構成でも、物・都市・自然の渾然一体とした生命力や、自分の外と内がつながってくるようなビジョン、細部と構造の連結が面白い、と思っていた。都市の循環。 冒険物としての楽しさもあり。人...
最初は、何となく自分を探す孤独な中年男性が若い女性に惹かれて、というありがちな話かと思った。そのベタな構成でも、物・都市・自然の渾然一体とした生命力や、自分の外と内がつながってくるようなビジョン、細部と構造の連結が面白い、と思っていた。都市の循環。 冒険物としての楽しさもあり。人工物と生物とが交じり合ったイメージの不気味な美しさもあり。思わぬどんでん返しの筋書きの面白さもあり。 非常に充実した読後感であった。
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大好きなんですよね〜大沢在昌。ちょっと色を変えて。 24年間、連絡のなかった父の「遺産」を巡る争いに巻き込まれる、フリーのカメラマンの主人公。遺産とは何なのか、夢の島とは何なのか…糸を手繰り寄せながら、敵なのか味方なのかもわからない人間の中でついに夢の島までたどり着く、という...
大好きなんですよね〜大沢在昌。ちょっと色を変えて。 24年間、連絡のなかった父の「遺産」を巡る争いに巻き込まれる、フリーのカメラマンの主人公。遺産とは何なのか、夢の島とは何なのか…糸を手繰り寄せながら、敵なのか味方なのかもわからない人間の中でついに夢の島までたどり着く、という話。 ひとつも飽きさせないところがいいです。実際、こんなに行動力あるやついねーよ!と思うけどそこは笑。あっさり正体バラしたり、主人公の憶測どおりに事が進んだり、ご都合主義な感じはあるけどとにかくキャラが魅力的で引き込まれる!
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後半の生命力の生い茂るむせ返るような描写より前半の無機物めいた乾いた記述の方が好みではあります、が面白かった。幻視的です。
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「戦争のあと一切の神がかり的なこと、迷信的なことはもちろん まともに宗教的なものにさえ反発を覚えてきた」 という主人公(建設業者)が、拡大を続ける80年代の東京を偶像視するという小説 これはデカダンスか、それとも耽美主義か あるいは、単に自覚のない、無責任なだけのナルシシズム...
「戦争のあと一切の神がかり的なこと、迷信的なことはもちろん まともに宗教的なものにさえ反発を覚えてきた」 という主人公(建設業者)が、拡大を続ける80年代の東京を偶像視するという小説 これはデカダンスか、それとも耽美主義か あるいは、単に自覚のない、無責任なだけのナルシシズムか
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