独りだけのウィルダーネス の商品レビュー
1960年代後半、ディーゼル技術者として働いていた著者がアラスカの大自然にログハウスを建てて独りで暮らした16か月の手記。 ハードボイルドな文体は書き出しからして小気味良い。 手紙が届いていた。 ナイフの角を封筒の角に刺しこんで封を切る。ブッシュ・パイロットのベイブ・オル...
1960年代後半、ディーゼル技術者として働いていた著者がアラスカの大自然にログハウスを建てて独りで暮らした16か月の手記。 ハードボイルドな文体は書き出しからして小気味良い。 手紙が届いていた。 ナイフの角を封筒の角に刺しこんで封を切る。ブッシュ・パイロットのベイブ・オルワーズからとうとう返事が来たのだ。 「何時来てくれても結構。氷の上に車輪着陸できなければ、水面を見つけてフロートで降りる」 ベイブらしい手紙だ。彼は日頃から極端に口数の少ない男である。 リチャード・プローンネク著『独りだけのウィルダーネス〜アラスカ・森の生活』 吉川竣二訳 東京創元社 1988年 いわゆるソローの『森の生活』を彷彿とさせるけど、妙に哲学臭いわけでもなく、頭でっかちなエコロジストなわけでもなく、純粋に日々の感動を綴った内容に、キャンプや登山に明け暮れていた中高生の頃の僕は共感を覚えたものだ。 物語のラスト、事情によりアラスカを離れなければいけなくなった著者は、ウィルダネスにある小屋はそれを避難の場として必要とする者のためにオープンでなくてはならないという考えから、愛着のあるログハウスのドアに鍵をかけずに去っていく。 エピローグは、著者が訪れる者の為にその小屋に残した置き手紙の文面からなっていて、それが同時に押しつけがましくなく読者へのメッセージともなっているという心憎い演出だ。 まだ版を重ねているかは分からないけど、アウトドア好きにはおススメの一冊。
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