生命学への招待 の商品レビュー
今まで読んだ現代倫理学(とカテゴライズしてよいかわからないが)の本の中で一番面白かった。 アメリカナイズされている既存の現代倫理学(生命倫理・環境倫理)は日本に受容される過程で必ず変容しなければならないと筆者は言うが、これが安易なナショナリズムの高揚としての変容ではなく、各地域各...
今まで読んだ現代倫理学(とカテゴライズしてよいかわからないが)の本の中で一番面白かった。 アメリカナイズされている既存の現代倫理学(生命倫理・環境倫理)は日本に受容される過程で必ず変容しなければならないと筆者は言うが、これが安易なナショナリズムの高揚としての変容ではなく、各地域各文化圏の「特殊性」を計算に入れて「普遍化」されなければならないという旨が響いた。 教科書的なものは一応通読したと自認しているが、ここのところ行き詰まりというか面白みを感じてこれなかった。どこかに現代倫理学の限界を感じていたのだが、著者の議論はともすれば「環境倫理学」の一分野に吸収されてしまいかねない議論を一つの学問分野として成立させようとし、またそこに至る過程も緻密であったように感じ非常に面白く読めた。 出版が1988年であるが、ここで綴られている議論は現在でもまだまだ有効であろう。以後の著書も追ってみたい。
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