システム哲学序説 の商品レビュー
『システムポリティクス』(1987年、勁草書房)の改訂版で、システム論にもとづく哲学とその応用について、著者自身の考えをごくおおまかにスケッチしている本です。 「はしがき」によると本書で論じられている現代システム理論は、システム科学とシステム工学・技術の二分野に対してメタ理論の...
『システムポリティクス』(1987年、勁草書房)の改訂版で、システム論にもとづく哲学とその応用について、著者自身の考えをごくおおまかにスケッチしている本です。 「はしがき」によると本書で論じられている現代システム理論は、システム科学とシステム工学・技術の二分野に対してメタ理論の位置にあり、哲学的分野として価値論、認識論、存在論といったテーマについての研究だとされています。著者は、ローマ・クラブの報告書にたずさわったアーヴィン・ラズロの思想からも大きな影響を受けており、本書においてもシステム論的な観点からの哲学的議論に加えて、現代の地球が直面している諸問題への解決策をシステム論的な立場からさぐろうとする試みをおこなっています。 本書では、システム理論の三つのモデルが提示されています。第一のものは、システムと環境との相互作用を通してシステムが自己の安定化を図るような秩序であり、「ファースト・サイバネティックス」と呼ばれています。第二のものは、新たな秩序を自己組織する働きをもつもので、「セカンド・サイバネティックス」と呼ばれています。そのうえで第三のモデルとして、システム相互の階層的な秩序を把握するための「重箱型階層性」という発想が提示されています。 また著者は、自然システムと認識システムが構造的に同型だと主張し、従来の主客二元論にもとづく哲学が陥った心身問題を、システムとその環境との相互作用をとらえることで解決にみちびくことができると論じています。 システム理論について概念的な理解を得るためには、ある程度役に立つのではないかと思います。
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