理学者 兆民 の商品レビュー
中江兆民が西洋の哲学をどのように理解していたのかということを、文献学的な手法によって解き明かしている本です。 兆民は、「東洋のルソー」と呼ばれ自由民権運動を理論的に支えた思想家として広くその名が知られていますが、彼の「理学」(西洋哲学)にかんする議論は従来あまり注目されることが...
中江兆民が西洋の哲学をどのように理解していたのかということを、文献学的な手法によって解き明かしている本です。 兆民は、「東洋のルソー」と呼ばれ自由民権運動を理論的に支えた思想家として広くその名が知られていますが、彼の「理学」(西洋哲学)にかんする議論は従来あまり注目されることがなく、永田広志のようにマルクス主義の立場からいまだ弁証法への理解を欠いた過渡期の唯物論として言及されるにとどまっていたと著者はいいます。本書では、兆民による西洋哲学の概説書『理学鉤玄』を中心にとりあげ、彼がどのような文献をもとにして西洋哲学についての理解を獲得したのかということを明らかにするとともに、彼がルソーから継承した「リベルテーモラル」への関心が「理学」への取り組みのなかにも息づいていることを明らかにしています。 兆民が西洋哲学をどのように受容したのかということにかんしては、井田進也がフランスの史料を渉猟して緻密な調査をおこなっていますが、本書は兆民の「理学」理解の中核的なテーマを掘り起こしつつ、その議論を解明しています。
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