技師クズネツォフの過去 の商品レビュー
声高に理不尽なこの世の無惨さを叫けぶ訳でもなく、派手な諜報戦とは無縁の片隅で人知れず滅びてゆくスパイ。愛する者のために祖国を裏切り、ささやかな人生のやり直しをひたむきに望むものの、不条理な運命の歯車が回り、孤独の闇の中で朽ち果てていく名も無き男の悲哀。あまりにも儚い一個人の生涯を...
声高に理不尽なこの世の無惨さを叫けぶ訳でもなく、派手な諜報戦とは無縁の片隅で人知れず滅びてゆくスパイ。愛する者のために祖国を裏切り、ささやかな人生のやり直しをひたむきに望むものの、不条理な運命の歯車が回り、孤独の闇の中で朽ち果てていく名も無き男の悲哀。あまりにも儚い一個人の生涯をジャーナリストならではの冷徹な筆致で描き切った心に沁む名作だ。KGBが象徴する旧ソ連の恐怖政治の実態、CIAが具現化するアメリカ帝国主義の虚無、愚劣なる大国のイデオロギーが如何に空虚であるかをまざまざと見せ付ける。
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