邪馬一国はなかった の商品レビュー
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1988年刊(80年刊の単行本に加筆)。 一世を風靡した「邪馬台国」対「邪馬一国」論争。 本書からは、基本的に邪馬一国の説明は破綻していることは明らかの感がある。4世紀刊行の三国志の呉書の一部が発見され、かつ統計学に習熟しない邪馬一国論者の説は、その位置比定、短里説も含め直ちには措信しがたい。 結局、著者も言う如く、考古学的知見の加味なしに、邪馬台国の位置確定は困難な時期に来ていると言えそう。 本書は、邪馬台国を題材に、とある論争に関するアンチテーゼ、それへの更なるアンチテーゼの重要性を看取できる一書か。 (再読) ミネル○○書房から、新装版の「邪馬台国はなかった」が出ているらしい。それがまた、アマ○○でも、レビュー数は少ないながらも、高評価らしい。うーん……。 (三読目) 本書は、これまで相当数再読しているが、「邪馬台国」対「邪馬一国」論争は、もはや興味をそそられない。 そればかりか、文言解釈のみだけの考古学的知見のない教条主義的な論争だけの書は、個人的に興味を持ち得なくなっている。文言解釈だけでは、主観の入り込む余地が多すぎるからである。 加えて、そもそも本書や「邪馬台国はなかった」は論争史の一部を飾るものになってしまった感がある。 もしかすると、三国志全文や残存各種の写本全体の解読書ならば、あるいは読むかもしれないが(そんな時間的余裕はないだろうが…)、そんなことをする奇特な研究者は少ないでしょうなぁ。
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