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リリー・マルレーンを聴いたことがありますか の商品レビュー

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2021/06/23

どこで入手したかもう忘れてしまったけれど、ずっと本棚に置き去りにされていた一冊。手に取ったことはあったはずだけれど、最後まで読むに至らなかった。知らない人、知らない歌、自分が生まれる前の戦争の話に怖気付いていたのかもしれない。 予想もつかないところでマレーネの名前に出会い、この...

どこで入手したかもう忘れてしまったけれど、ずっと本棚に置き去りにされていた一冊。手に取ったことはあったはずだけれど、最後まで読むに至らなかった。知らない人、知らない歌、自分が生まれる前の戦争の話に怖気付いていたのかもしれない。 予想もつかないところでマレーネの名前に出会い、この本の事を思い出させてもらえた幸運に感謝。 この歌が辿った運命はドラマティックだったかもしれないけれど、きっとこんな風に歌い継がれた歌は時代ごとに他にもあるのだろう。 第一次大戦時、ドイツが作った『イギリスをやっつけろ』という歌をイギリス兵がよく歌ったということについて、「ドイツ人には、このようなイギリス式のユーモアはわからない」とあったのが印象的だった。Yankee Doodleと一緒だ! 効率の良い取材の記録などではなく、半ば体当たりのように歌の足跡を追いかける筆者の文章からは、知らなかった世界が浮かび上がってきてちょっと辛い。大抵の義務教育における授業に、なぜかあまりきちんと登場しない東ヨーロッパの国々のこと。戦争の真っ最中だった時代の庶民の生活や兵士たちの置かれた環境。そして簡単に消えるわけもないその傷跡。 一方でそうした歴史に折り合いをつけている逞しい庶民の暮らしぶりや、日本では想像もつかないような発想が生き生きと描かれて楽しくもなる。 2021年の今からすれば、この本が書かれたこと自体がもう50年近く前のこと。 変化のスピードには加速度がついて、既にここに描かれているような様子ではないんだろうな。 戦争とは関係なく生き残った歌もたくさんあるだろうけれど、やはり非常事態ほど歌に救いを求める状況が生まれやすいのも事実。 こんなに多くの人がこの歌を覚えていたんだ、ということが切ない。

Posted byブクログ