黒船異変 の商品レビュー
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1988年刊行。著者は横浜市大教授(専攻東洋史)。◆黒船来航から日米和親条約締結までに絞り、日米双方の事情を軸に解説。黒船来航時の江戸市中の様子(人心の沈静化)、条約交渉の展開、蘭商館長からの聴取、ジョン万次郎からの聴取内容など総じて丁寧に叙述。日本開国は米墨戦争後の米海軍に新規の役割を付与し、組織防衛目的と見る点は、官僚・軍人の普遍的ありようを示唆。また、井伊直弼が勝海舟以上の開国積極主義者(交易許可、朱印船復活、海軍充実)、ゴリゴリの保守主義者でないことを明示。◇なお阿部正弘は再評価すべき政治家。
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1853年7月、巨大な黒船4隻が浦賀沖に現れた。 噂は日本国中をかけめぐり、幕藩体制は大きな動揺を きたす。ペリー来航は日本社会にどのような衝撃を与 えたのか、戦争に至らずに条約が結ばれた背景は何な のか。日本近代の開始を「異変」という概念でとらえ、 開国に向けての日本...
1853年7月、巨大な黒船4隻が浦賀沖に現れた。 噂は日本国中をかけめぐり、幕藩体制は大きな動揺を きたす。ペリー来航は日本社会にどのような衝撃を与 えたのか、戦争に至らずに条約が結ばれた背景は何な のか。日本近代の開始を「異変」という概念でとらえ、 開国に向けての日本の情報の流れを解明し、幕末社会 が変容する姿を描く。(1988年の刊) 1章 黒船来る 2章 日米の情報比較 3章 ペリー派遣と黒船 4章 幕府の対応 5章 新たな情報収集 6章 黒船見物と市中取締 7章 条約交渉の展開 8章 日米和親条約なる 9章 黒船異変とは何か 本書は黒船来航から日米和親条約締結までの日米交渉を 描いた本である。 「太平の眠りをさます上喜撰たったたった4杯で夜も眠 れず」という狂歌は、幕府がオランダからの事前情報を 活かせず右往左往する様を描いたものとして有名である が、本書を読むと、限られた条件の中で最善の努力をお こなっており「幕府無能説」にほとんど根拠が無いこと がわかる。 幕末の開明派官僚というと川路聖謨や岩瀬忠震が思い浮 かぶが、本書では林大学頭、井戸覚弘、鵜殿長鋭、伊沢 政義などマイナーな人たちが頑張っている。 (昌平學関係者であるという共通点があり、突出した天 才がいたとい事では無く、幕府の官僚が全体的に優秀で あったという事がわかる。) 先に2004年刊の「幕末外交と開国(ちくま新書)」 を読んでいたため、新鮮な驚きは少なかったが、この本 を刊行時に読んでいたらと思うと残念な気がする。
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エピローグに展開される「幕府無能説には、ほとんど根拠がない」とする主張に納得。 幕府の交渉にあたった人たちの教養・国際情勢の認識の正しさなど、ものすごくおもしろかった。
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