朱夏(下) の商品レビュー
満州開拓団と、その戦後の引き揚げの様子を描いた小説を読むのは思えば初めてになる。知識としては知っていても、やはり想像を絶する過酷な状況に絶句してしまう。 子供を売ることを考えたり、言い訳を連ねながら窃盗を行ったり、主人公の思考回路はあまり共感しやすいとは言えない。現代のSNSであ...
満州開拓団と、その戦後の引き揚げの様子を描いた小説を読むのは思えば初めてになる。知識としては知っていても、やはり想像を絶する過酷な状況に絶句してしまう。 子供を売ることを考えたり、言い訳を連ねながら窃盗を行ったり、主人公の思考回路はあまり共感しやすいとは言えない。現代のSNSであれば即炎上するようなモノローグは多い。しかし、そんな彼女を誰が批判できよう。共感ができないこと、それ自体が平和の特権であるように感じる。 同時に、日本が敗北し満州の人々が"反撃"するその時まで、現地人の土地を奪うことはもちろん、米はすべて日本人に配給され現地人は口にできない、といった歪な状況に毛程も違和感を覚えなかった主人公の姿は、人間がいかに息を吸うように差別ができるかという事実もまたリアルに示している。
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重かったです。 壮絶な満州での日々が、描かれていました。 少女時代の綾子とは違う、母や妻になった綾子にイラっとする場面を何回か感じました。でもそれはとても内面を正直に描いているからだとも思えました。普通だったら描かない心の描写まで描かれているからこその苛立ちなのかな。生きるってこ...
重かったです。 壮絶な満州での日々が、描かれていました。 少女時代の綾子とは違う、母や妻になった綾子にイラっとする場面を何回か感じました。でもそれはとても内面を正直に描いているからだとも思えました。普通だったら描かない心の描写まで描かれているからこその苛立ちなのかな。生きるってこういう事なのかもしれないと感じました。
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天真爛漫なお嬢さんが終戦間際に満州開拓に渡り、夢破れて乳飲み子を抱えながらの極貧の生活に堪え忍びます。最低の生活を描いているのに、それでもどこか格調高いのが宮尾文学の美ですね。
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