転換する日本企業 の商品レビュー
1987年に刊行された本です。日本的経営の特殊性を、市場を重視するアメリカの経営と比較しながら論じるとともに、グローバル化の進展によって日本企業のあり方も見なおされなければならないということが論じられています。 本書では、労使一体型の経営や終身雇用といった日本的経営の特殊性を、...
1987年に刊行された本です。日本的経営の特殊性を、市場を重視するアメリカの経営と比較しながら論じるとともに、グローバル化の進展によって日本企業のあり方も見なおされなければならないということが論じられています。 本書では、労使一体型の経営や終身雇用といった日本的経営の特殊性を、日本固有の文化・歴史に還元して説明するのではなく、反対に「日本固有の文化・歴史によって制約を受けている日本人が、いかにしてそうした文化的基盤を所与としながら、「経営的合理性」を追求したのか」が論じられています。つまり、日本的経営を「問題」としてとらえるのではなく、むしろ問題に対する「解」としてとらえているということができるでしょう。そのうえで、グローバル化によって「問題」そのものが変わったのだから、日本的経営も変わることが求められているという主張が展開されています。 疑問に感じたのは、日本的経営の長所を生かすような「問題」を整えるということが、まったく問題にされていない点です。日本に開かれた市場を導入しなければならないというのは、貿易赤字に苦しむアメリカによって要請されていたこともあり、規定の「問題」としてとらえられていたのでしょうが、バブル崩壊後の長い不況や、小泉改革のもとで格差が大きな問題となったことを知っている現代から振り返るとき、べつの道はなかったのだろうかと考えてしまいます。
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