境界の誘惑 の商品レビュー
遠野物語や、与那国島の伝承を例に取りながら、人間と自然の関係について考察した本。 自然=他界であり、人間の世界=現世だとすると、文明の発展は、他界と現世の境界線をいかに押し広げるかという戦いであり、自然が畏れを失ってしまった現代においても、個人的なレベルで他界は存在し続ける。 ...
遠野物語や、与那国島の伝承を例に取りながら、人間と自然の関係について考察した本。 自然=他界であり、人間の世界=現世だとすると、文明の発展は、他界と現世の境界線をいかに押し広げるかという戦いであり、自然が畏れを失ってしまった現代においても、個人的なレベルで他界は存在し続ける。 他界と現世を隔てる境界線はいろいろ。川であったり、山麓であったり、海であったり、時には部屋と外を隔てるドア一枚でさえ立派な境界になる。 女性、老人、不具者、狂人、病人など、社会的に弱い立場にある人間は自然に近く、境界越えをしやすいが、逆に社会の枠組みの中で生きてゆかなくてはならない、あるいは枠組みを支えてゆかなくてはならない男性は、境界を越えるのが不得手なのだという。 そして境界の行き来にまつわるさまざまなエピソードは、各地に民話や昔話として残り、物語を生む母体となっている。
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