ふしぎなねこはあんずいろ の商品レビュー
ミホの家にエジプトからやってきたアビシニヤねこ(アビシニアン)のマウ。 ビロードのようなあんず色の毛並みと、きらきら光るグリーンの瞳、女王さまのような気品。何かを探すかのように毎日出歩き、ある時はスイセンの花を持ち帰る……。 どこか秘密めいた「高貴なねこ、マウ」に、ミホはすっかり...
ミホの家にエジプトからやってきたアビシニヤねこ(アビシニアン)のマウ。 ビロードのようなあんず色の毛並みと、きらきら光るグリーンの瞳、女王さまのような気品。何かを探すかのように毎日出歩き、ある時はスイセンの花を持ち帰る……。 どこか秘密めいた「高貴なねこ、マウ」に、ミホはすっかり夢中。身近な古いものと人間とのかかわり合いを探るという宿題に、ミホは迷わずマウを題材に選びます。 古代エジプトでは神と崇められていたというアビシニヤねこ。マウとアビシニヤねこの歴史を調べるうちに古代エジプトの歴史に触れ、やがてミホはツタンカーメン・アンケセナーメン夫妻のそばに仕えたアビシニヤねこの思い出をかいま見ます。 ミホは引っ込み思案で自分に自信が持てない女の子。それがマウという宝物を得たことで、大切なものを守りたい!という強い心が生まれました。それは落ち込んでしまった友人に手を差し伸べる勇気にもつながったのです。 ミホは不思議なできごとに出会い、少し成長して、新しい明日へ一歩足を踏み出しました。 ……この作品一番の衝撃シーンは、ツタンカーメンの狩りのシーンで、ずーんと銃がひびいてしまうところですね。なんというオーパーツ。この場面はミホが夢でテレビ番組を見ている?ということになっているので、ミホの勘違いということにしておけばよいでしょうか。 この他にも今となっては実際の考古学的見地とは合致しない部分があったり(ツタンカーメンの死因や例の花束周りのことなど)、エジプト物だと思って読むとアレっ?と引っ掛かることがあります。20年も前に出版された本なので、内容が少し古いのはしかたがないことと、割り切って読む必要があります。 この作品ではねこの姿が、時に高貴に、時に愛らしく、魅力的に描かれています。謎めいたマウがじょじょにミホに心を許してゆく様子はとても微笑ましく、しかし結末を知るとなんとも切ないものがあります。ミホとの暮らしはマウにとっても心安らぐ日々だったのではないでしょうか。
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