プッチーニ トスカ の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
新国立劇場にてトスカを観劇。プッチーニの甘やかなメロディがちりばめられ好きだったのだけれど、ワーグナーほど熱狂できなかった。その理由の大きなところは、あまりにも忙しなく進む物語に、納得も腹落ちもしていなかったから。そんな気持ちを持ちながら開いた本書では、初演時の批評家たちも似たようなことを言っている人がいるので安心した。一方で、オペラの時代が終わりつつあるときに生まれた本作の背景もより理解できて面白かった。 特にそれなーとなったのは、アンドレ・メサジュの「トスカとヴェリズモ」(1903年)。プッチーニの才能をたたえながらも、それでも呈している意見という感じで、しっくりくる。 …我々はそれが自分を誘惑する目的だけの純粋に旋律的な音楽を有し、そのもとで音楽の発した光線を我々にもたらすように思われたあの古い音楽のことをついに残念ながら考えてしまうのである。… …サルドゥが数日前ある評論家に「三千回も上演された一つのドラマは、そのドラマが気に入らないと思う人々がいようとも、そのドラマは常に正しいのである」と答えていたように、このドラマは成功を収めた。しかしそれでも私は、この作品が音楽的でないと認めないわけにはゆかない。陰謀、拷問場面、それらを締めくくる圧巻としてさらに銃殺、これは決して本来音楽にする良い題材ではない。…そうはいってもこれは全く素早く通り過ぎる瞬間であって、気の毒な作曲家は、喘ぎながらこのあたふたと進むストーリーを追いかけなければならず、そのストーリーの中で音楽が自分を取り戻るひまはほとんどない。… オペラ歌手がヒロインになるオペラという設定自体が、オペラの危機であるのは、なるほどと思った。
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