柳宗悦 の商品レビュー
無名の陶工の作り出した器物などの民芸品の美を称揚した柳宗悦の本質を、彼の宗教的心情に見いだそうとする試みです。 著者は、柳においてなぜ宗教と美が一つになることが可能だったのかという問いを立て、その解決へとつながる道筋を、柳の「妙好人」への注目のうちに見いだしています。みずからの...
無名の陶工の作り出した器物などの民芸品の美を称揚した柳宗悦の本質を、彼の宗教的心情に見いだそうとする試みです。 著者は、柳においてなぜ宗教と美が一つになることが可能だったのかという問いを立て、その解決へとつながる道筋を、柳の「妙好人」への注目のうちに見いだしています。みずからの罪悪を深く自覚する妙好人は、そのような「凡夫」である自己をも阿弥陀仏が救ってくれるという感謝のなかで、俗世を送っています。柳はこうした彼らの生き方のうちに、現実の生活の中で生きて働いている具体的な宗教の姿を見いだしたのだと著者は主張します。そのうえで、無名の職人によってたくまずに作られる民芸が美しくなるのは、ちょうど妙好人が無学のまま、生活にまみれたままで救われていくのと同じだとする考えが説明されています。 無名の職人の作り出す民芸品には伸びやかな「自在心」が働いていると柳はいいます。「自在心」とは、いっさいの私心をもたないこと、つまり無心を意味しています。そして、宗教とは自在心を得て安心の生活に入ることであり、宗教と美は一体になると柳は考えたのだと著者は主張します。 最後に著者は、超越的なものの価値が失墜し、現世的なものにしか価値を認めない現代にあって、美と宗教が結びつくことを説く柳の発想が、世俗化の時代の宗教のあるべき姿を示しているのではないかと述べています。
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