黒い聖母 の商品レビュー
ブックオフで何気なく手にとってぱらぱらめくってみたら、今まで見たことのない強烈な宗教画の図版がたくさん載ってるのにひかれて購入。タイトルの「黒い聖母」とは、信徒がささげるろうそくの煙にいぶされて黒光りするようになった聖母像のことだが、なかにはアフリカの民衆芸術とそっくりの強烈な個...
ブックオフで何気なく手にとってぱらぱらめくってみたら、今まで見たことのない強烈な宗教画の図版がたくさん載ってるのにひかれて購入。タイトルの「黒い聖母」とは、信徒がささげるろうそくの煙にいぶされて黒光りするようになった聖母像のことだが、なかにはアフリカの民衆芸術とそっくりの強烈な個性を放つ聖母子像までいて、びっくりしてしまう。中世スペインの『ベアトゥス黙示録』に描かれている奇怪なイメージも一見の価値あり。本書では古代中国から中世キリスト教まで、さまざまな宗教芸術における色彩の象徴を論じたものだが、道教、キリスト教、仏教、ヒンドゥー教、古代エジプトと、洋の東西にわたって、よくもこれだけ自在に論じられるものだと感心してしまう。著者の語る蘊蓄に耳を傾けながら図版を眺めるだけで何時間も楽しく過ごすことのできる本だ。ところでひとつだけ気になったのは、イスラム芸術についてひとことも触れられていないことだ。美しい色彩、特に青色のすばらしいモスクは世界のあちこちに見られるのに。さしもの教養人にも盲点があったということだろうか。
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