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グレン・グールド変奏曲 の商品レビュー

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2011/03/28

グレン・グールド変奏曲 (カラヤンのシベリウス第五番に手を加えたことを指摘されて) では、あなたご自身のレコードについても同じように 見ず知らずの聞き手、あるいは複数の聞き手たちによって 独断的に手を加えられても構わないのですか? そうしてもらえなかったら、私の目的は達せられな...

グレン・グールド変奏曲 (カラヤンのシベリウス第五番に手を加えたことを指摘されて) では、あなたご自身のレコードについても同じように 見ず知らずの聞き手、あるいは複数の聞き手たちによって 独断的に手を加えられても構わないのですか? そうしてもらえなかったら、私の目的は達せられないことになります。 残された80枚のレコードの中で、グールドのピアノ・トーンは即座に識別できる。 ギーゼキングのドビュッシーとラヴェル、ルービンシュタインのショパン、 シュナーベルのベートーヴェン、カッチェンのブラームス、ミケランジェリのシューマンと同様、 その演奏は音楽を明示し、このアーティストの解釈こそ、聞き手についに その作曲家に触れることができたと感じる瞬間を与えるものと思わせる。 ゴールドベルクではまず最初に簡単なテーマが告げられる。 このテーマは30回変容を遂げ、さまざまな音階で改めて示されるが、 その理論上の複雑さは、実際に演奏に伴う喜びによって一層強められる。 この作品の最後に変奏が全て終わった後でこの同じテーマが再び演奏されるが このとき初めて文字通りの繰り返しが「言葉は同じでも限りなく豊かに」なるのである。 1964年にグールドはコンサート界を去り、テクノロジー人間として生まれ変わった。 彼はテクノロジーを利用して無限に近い再生産、無限の反復、無限の創造と再創造を図ったのである。 彼がレコーディングスタジオを「子宮的」な場所「時間が自らのうちに時間を取り込み」、 レコーディングを行うアーティストともに「独自の法則と自由・・・ そして並外れた可能性をもつ、新しい芸術形態」が 生まれる場所と指摘したのも当然である。 コンサートホールにおいては主眼はその場で演奏する奏者が聴衆に受け入れられることにおかれる。 コンサートは二時間の間に即、変われ、消費され、消耗される商品というわけである。 新しい商品は、無限に再生産が可能な、 プラスチックのレコードやテープであるとグールドは認識したのである。 グールドのエクスタシーとは「自己と音楽の内面」との合体なのだ。 グールドにとって演奏は創造行為であった。 さらに創造的演奏家としての彼の活動は、われわれに聞き手としての責任を課している。 芸術の目標は目の眩むような澄み切った状況を少しずつ永久に向けて構築することである。

Posted byブクログ