ソロモンの歌 の商品レビュー
著者の詩人たちとの交流を回想したエッセイや、音楽、絵画、文学にかんする文章などを収録しています。 著者は、「何億という人間の中には「この宇宙の中で人間が生きてる」という―簡単といえば簡単な事実について、ある意味を、突然、私たちが日常生活ではあまり経験しないような形で、啓示できる...
著者の詩人たちとの交流を回想したエッセイや、音楽、絵画、文学にかんする文章などを収録しています。 著者は、「何億という人間の中には「この宇宙の中で人間が生きてる」という―簡単といえば簡単な事実について、ある意味を、突然、私たちが日常生活ではあまり経験しないような形で、啓示できる人間がいる」と語り、「詩人」とはそういう人間のことだと述べています。本書では、中原中也や吉田一穂との交流について著者自身の体験が語られていますが、そこにえがかれた詩人たちは、著者の傍らにいながら、異なる世界を見つめているかのような印象を読者にあたえます。 表題作となっている「ソロモンの歌」は、東京の街のありかたについての感懐から説き起こして、西洋の人びとがみずからの伝統を継承していくしかたが、現代の日本人とどれほど異なっているかということが考察されています。また「荷風を読んで」と題されたエッセイでも、同様の問題が荷風の文学を手がかりに、あらためて論じなおされています。 ほかに、クレーやマネの絵画についての批評なども収録されています。
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サークルのお友達が貸してくれた本。著者の吉田秀和さんは、日本を代表する有名な音楽評論家なのだそう。とっても読み応えのあるエッセイ集だった。「一本の木」が好き。 氏が学生時代に中原中也にフランス語を教わったという話、なんて素敵なのでしょう。生身の彼を知るひとがまだいるなんて……...
サークルのお友達が貸してくれた本。著者の吉田秀和さんは、日本を代表する有名な音楽評論家なのだそう。とっても読み応えのあるエッセイ集だった。「一本の木」が好き。 氏が学生時代に中原中也にフランス語を教わったという話、なんて素敵なのでしょう。生身の彼を知るひとがまだいるなんて……中也が案外近い時代のひとだったことに驚き。こういう知的な交流にすごく憧れる。書生気質?というか、とにかく学生特有の身軽さと無鉄砲さと明朗さでもって、後の人生にまで深く残るようなひととの関わりを持つのって、なんかいいなあ。羨ましい。 音楽の話でなくとも、むしろ専門外の話題であるからこそ、すごいひとの書くエッセイはやはりすごいのだと実感。自分のなかにブレない軸のような考えがあってこそ、色々な視点を展開出来るのかもしれない。
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