月に泣く の商品レビュー
リアリズムに幻想が混じる文章表現の技を味わう、寂しさを美醜で彩色した二編。「月に泣く」は行間に泡となって消えた言葉があるようだ。 昭和の現実味ある廃れた町と、神話っぽい雰囲気の衰退していく村で、孤絶を受け入れるしかない中年男の語り。彼らは社会的に見れば敗れた者だ。惨めな境遇の男...
リアリズムに幻想が混じる文章表現の技を味わう、寂しさを美醜で彩色した二編。「月に泣く」は行間に泡となって消えた言葉があるようだ。 昭和の現実味ある廃れた町と、神話っぽい雰囲気の衰退していく村で、孤絶を受け入れるしかない中年男の語り。彼らは社会的に見れば敗れた者だ。惨めな境遇の男が惨めな境遇の性的な女に、聖性を見ているのは物悲しい。主人公と、関わる者たちが悲しい。作者は人や、その営みと同じくらい土地に対する意識があると思う。土地や自然と発展の関係を、失うこと還ることで表しているんじゃないだろうか。
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