毒いりチョコレート事件 の商品レビュー
東西ミステリ20位の本作。海外ミステリの古典では英米御三家に加えてかなり挙げられる事が多い本作。 所謂、多重解決ものと言う事でミステリ好きにはたまらない作品なんでしょうね。 謎解きの面白さと言うより推理小説の可能性を追い求めたり、"推理小説内の自覚"と言う...
東西ミステリ20位の本作。海外ミステリの古典では英米御三家に加えてかなり挙げられる事が多い本作。 所謂、多重解決ものと言う事でミステリ好きにはたまらない作品なんでしょうね。 謎解きの面白さと言うより推理小説の可能性を追い求めたり、"推理小説内の自覚"と言うメタ的な構造が特徴の野心溢れる作品と言う感じ。 つまり、「推理小説の謎解きとはそこに記述されている事実と展開でどうにでもなり得る」と言う事です。 本作以外だと中井英夫の「虚無への供物」も類する感じでしょうか。
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創元推理文庫版の高橋泰邦訳が王道のようだけど、その日図書館で手に入ったのはこの一九八六年のポプラ社文庫版。麻生九美「訳」ではなく「文」となっているから、抄訳なのかもしれない。もしそれで児童向けに内容が多少簡略化されているものだったとしても、文字は大きめだし文章も平易、おかげでな...
創元推理文庫版の高橋泰邦訳が王道のようだけど、その日図書館で手に入ったのはこの一九八六年のポプラ社文庫版。麻生九美「訳」ではなく「文」となっているから、抄訳なのかもしれない。もしそれで児童向けに内容が多少簡略化されているものだったとしても、文字は大きめだし文章も平易、おかげでなんのストレスもなくだいたい一日で読めた。却ってラッキーだったかもしれない。(それから、表紙のインパクトがすごい。) 警察が匙を投げた、毒入りチョコレートによる殺人事件。『犯罪研究会』の六人のメンバーがそれぞれ独自に捜査を行い、一週間後にまた集まって、一晩ずつ順番に推理を披露することに。果たして真相にたどり着けるのか。 推理披露の場での各人の心模様のリアルな人間臭さは、もはや喜劇。『十二人の優しい日本人』や『キサラギ』などを思い出したりしながら、結論の異なる六人の推理のひとつひとつに「なるほど、そっちかー!」などと素直に感心して楽しく消費しているうちに、最後のチタウィック氏の台詞と同じ違和感にたどり着く。 「推理小説ではたいてい、ひとつの事実からはひとつの推理しか成立しないことになっているらしいからです。そして、その推理はつねに正解なのです。」 そう、読者は、小説の中で「真実を言い当てた」かのように見えた「正解の推理」が五回も六回も覆されるところを、今まさに目の当たりにしたところだ。これはミステリーの形をしたアンチミステリーなのですね。アンチといってももちろん「ミステリーなんてインチキだ!」などと喧嘩腰に否定してくるのではなく、論理ゲームという側面をもつ文学/エンタメとしてのミステリーを愛している全ての人に対して、「さあ、ではあなたの好きな論理ゲームの根底にあるこの問題についてはどう考えますか?」と冷静かつ紳士的に問いを提示してくるようで、これはこれで迫力がある。 一九二九年発表。ということは、エラリー・クイーンのデビュー作『ローマ帽子の秘密』と同じかあ。
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タイトル表示の“毒”が漢字で「いり」が平仮名になっているとは、どんな基準なのでしょうか? しかし児童向きにこの作品を翻訳とは渋い選定です。 しかし、ミステリーファン開拓のためには非常に素晴らしい選定だと思います。 忙しくて読書時間が取れない大人にとっても、この膨大な原作を...
タイトル表示の“毒”が漢字で「いり」が平仮名になっているとは、どんな基準なのでしょうか? しかし児童向きにこの作品を翻訳とは渋い選定です。 しかし、ミステリーファン開拓のためには非常に素晴らしい選定だと思います。 忙しくて読書時間が取れない大人にとっても、この膨大な原作を簡潔に読めるのはありがたい存在です。 私はまずこのポプラ社文庫版で流れをつかみ、その後で創元推理文庫の旧訳版(高橋泰邦訳)を流し読みしました。 流し読みでも1週間かかったのだから、最初から完訳版を全部読んでいたら1か月かかっても読み終えられなかったかもしれません。 ポプラ社文庫からはその他にも色々とミステリーの翻訳が出ているようなので、今後はこの方式で読んでいこうと思います。 少年少女・ネタバレSALONO(ネタバレ注意!) 毒入りチョコレート事件 ネタバレ検討会 https://sfklubo.blog.jp/archives/12884387.html
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