仏教の根底にあるもの の商品レビュー
釈尊を開祖とする仏教が、インドから中国を経て日本へともたらされるなかで変化しながらも、その根底にある本質的な考えかたがこんにちまで受け継がれてきているという立場から、いくつかのテーマについて論じている本です。 まずは釈尊の悟りが、「大いなる光明」「大いなる光照」と語られている点...
釈尊を開祖とする仏教が、インドから中国を経て日本へともたらされるなかで変化しながらも、その根底にある本質的な考えかたがこんにちまで受け継がれてきているという立場から、いくつかのテーマについて論じている本です。 まずは釈尊の悟りが、「大いなる光明」「大いなる光照」と語られている点に、著者は注目します。そして、一見したところ相反するかのように見える親鸞と道元のことばにも同様の表現があることに目を向け、「救い」と「悟り」の両方の道に通じるものを見いだそうとしています。つづいて同様の観点から、法然、親鸞、道元といった、日本の仏教に革新をもたらした思想家たちの議論について検討をおこない、彼らがそれぞれ独自のしかたで、仏教の本質というべき考えかたにたどり着いたことが論じられます。 さらに著者は、仏教における「無」と「時間」というテーマについての考察をおこなっています。とくに時間については、有部の思想から龍樹、華厳経への展開をたどり、最後に道元の「有時」について考察がなされています。華厳経では一即一切の発想にもとづいて、あらゆる時間が相互嵌入の関係にあることが説かれていたものの、いまだ形式的な議論にとどまっていたと著者はいいます。そして、道元において主体的な立場からそれぞれの時間が「永遠の今」に通じることが明らかにされていることを高く評価しています。 本書に収録されているのは専門の論文ではなく、一般の読者に向けて書かれた文章であり、仏教が現代に問いかけているもっとも中心的な問題に対して著者が大胆に切り込んでいくというスタイルで議論が展開されています。
Posted by
これほどに真摯な求道の精神をもった仏教の追求者は、稀有だ。しかもその到達した境地の深さも、人の心に強烈に働きかける力にみなぎる。仏教「学者」でありながら、「学者」の域をはるかに超えている。
Posted by
- 1