ヤング・シャーロック ピラミッドの謎 の商品レビュー

A.アーノルド【著】,宮脇孝雄【訳】

2021/02/28

シャーロック・ホームズとワトソンという、ドイルのキャラクターを利用した二次創作小説。スピルバーグがこのストーリーで映画を製作し、その脚本をベースにした小説ということなので、いわゆる『ホームズ正典』とは別次元の話として楽しむのが正解。

裏を返せば、既にドイルのホームズを読んでいる人にとっては、「違う、こうじゃない」がたくさん出てくるので、その違和感を拭い去るのに時間がかかる。
ホームズとワトソンのキャラクター像はだいたい「正典」と同だが、学生時代にホームズとワトソンが出会っているというのも妙だし、長じた時には女嫌いのような性格になっていたホームズに初恋の相手がいるというのもしっくりこない。いずれも、映画化するにあたって必要な要素だったのかもしれないが、この2つがあるだけで、「これはホームズものではないのだな」と思わせるに充分な違和感を生んでいる。

ハリウッド映画らしく、最後の最後になって一気に話が動き、ページ数でいうと230ページ中の20ページ分ぐらいで急速に話は転換し、エンドロールへと突き進む。このスピード感は映画ならでは。
どんでん返しのためのツールは序盤から伏線として登場していて、そのあたりは脚本としては面白い。ただ、この「奥の手」がこの時代のロンドンで実際に駆動したのか？という疑問もあったりする。まぁ、このあたりの「非現実感」も含めて、ハリウッド映画らしいと言えばらしいか。