フーガ の商品レビュー
【内容】 フーガの略史を技術的観点から。 著者が言うには、頁8「≪厳格≫なのは対位法であって,フーガはそうではない」です。 【類別】 音楽。 西洋古典音楽(クラシック)、対位法。 【着目】 第1章で対位法、第2章に発展途上のフーガ、第3章はフーガを集成したJ・S・バッハ、第4...
【内容】 フーガの略史を技術的観点から。 著者が言うには、頁8「≪厳格≫なのは対位法であって,フーガはそうではない」です。 【類別】 音楽。 西洋古典音楽(クラシック)、対位法。 【着目】 第1章で対位法、第2章に発展途上のフーガ、第3章はフーガを集成したJ・S・バッハ、第4章がバッハ以後のフーガ、第5章においてフーガ考。 ともあれバッハですが、バッハだけではない。バッハ。バッハッハ。フーガ。 【備考】 このレビューは第7刷に拠っています。
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クラシック音楽に関心がある方でも、「フーガってなに?」という方は少なくないと思います。そうした方におすすめしたい本です。 フーガとは音細胞(主唱)を模倣的に展開する対位法の技法ということができるかもしれません。本書の言葉を借りれば「主要主題ないし主唱からはじまる、模倣に基づ...
クラシック音楽に関心がある方でも、「フーガってなに?」という方は少なくないと思います。そうした方におすすめしたい本です。 フーガとは音細胞(主唱)を模倣的に展開する対位法の技法ということができるかもしれません。本書の言葉を借りれば「主要主題ないし主唱からはじまる、模倣に基づいた対位法的な展開の方法 (p. 56)」にすぎないのです。つまり、ソナタやロンドのようにそれ自体に基本的な枠組みがあるわけではありません。ですから、モーツァルトは交響曲に、ベートーヴェンはソナタに大フガートを置くといった仕掛けを施したのです。この自由さがフーガのとっつきにくさの要因の一つだと思います。 フーガとはもともと対位法的な作品を広くさす言葉であり、カノンなどもこれに含まれていたといいます。そして、先人が発達させた主唱に基づく展開の技法を引き継ぎ、その書法の可能性を追究し、フーガという礎を作り上げたのがJ.S.バッハでした。その礎は100年以上のあいだなんら変わることのないものでした。 しかし、時を経て調性という枠組み自体が見直されるなかで、バッハが築いたフーガの技法もまた形を変えてゆくことになります(反対にいえば、ロマン派の時代にはなんら変わらなかったのです。少なくとも本書によれば)。なぜならフーガという技法は、調性に拘束されることはないにせよ、調性との関わりのなかで発達してきた書法だからです。バルトークやシェーンベルクがこれに先鞭をつけました。 ここまでかなり乱暴に内容をかいつまんで述べましたが、つまりフーガは大きく変化する音楽史に通底する一つの技だということです。フーガは自由に展開され、時に情熱的でさえあるということです。その意味で本書は、フーガに関心を持つ方に、その魅力をあますところなく伝えてくれる本だと思います。
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