奇子(愛蔵版)(上) の商品レビュー

手塚治虫(著者)

2011/06/08

田舎の閉塞感・戦後日本の混沌を背景とした、手塚先生のダークな描写が鈍く光る作品。
犯罪隠蔽、近親相姦など様々な禁忌が、幼く罪のない奇子をやがて拉致監禁へと追いこんでいくのが恐ろしく怖い。
登場人物の誰もがどこか狂ってしまっているのが救いがないし、酷く陰鬱な話なのだがつい引き込まれてしまう。
改めて手塚先生の漫画の持つ力を思い知った。

2009/10/04

霜川事件、三鷹事件、松川事件をうまく織り交ぜつつ、戦後史の裏面を鮮やかに綴った手塚治虫の裏代表作のひとつ。どこまでもどこまでも暗い話に関わらず読者をまったく離さないのは、確実に漫画の神様・手塚治虫の力の成せる技です。文庫本に収録されている橋本治の解説「少年だった大人はグロテスクを獲得することが出来るか？」も必見（『奇子』に触れられているのはごく一部ですが）。