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のらくろ中隊長 の商品レビュー

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2021/05/05

田河水泡は、戦前に描いていた「のらくろ」をどう思っていたのだろうか。本巻を読むと、今まで発表していたのらくろ作品は、軍隊賛美・戦争賛美をしてしまった反省のように読める。最後には猛犬聯隊も解散してしまい、ついに軍隊もなくなってしまった。 もちろん、戦前の「のらくろ」は当時の時代背景...

田河水泡は、戦前に描いていた「のらくろ」をどう思っていたのだろうか。本巻を読むと、今まで発表していたのらくろ作品は、軍隊賛美・戦争賛美をしてしまった反省のように読める。最後には猛犬聯隊も解散してしまい、ついに軍隊もなくなってしまった。 もちろん、戦前の「のらくろ」は当時の時代背景を無視して読む事はできない。明らかに満州事変日支事変を題材にして、バンバン戦争していたのは事実である。当時は本巻とは違いのらくろは体力抜群で、とにかく大活躍をしていた。 本巻ののらくろは「予備さん」と言われ、体力も落ち、往年の気力もない。そして前述したように軍隊解散があり、またただの野良犬に戻る。 これは田河水泡の立場をのらくろが代弁してはいないか。確かに時代は変わった。善しとされていたものが悪になってしまった。それには抗えないし、一理も二理もあるので同意するし歓迎もする。でも、そこには大きな喪失感も伴う。その虚しさと悲しさ。それをひしと受け取る事ができた。

Posted byブクログ