総員玉砕せよ! の商品レビュー
数多の尊い生命が当たり前の如く失われていく「戦争」というものを考えた時、そこには、「悲惨」「残酷」などといった印象が浮かぶことと思います。しかし、本作品を読むとこれらの表現にさえ雅味を感じてしまいます。私はこの作品を読んで「戦争」というものが、人類の行為の中で最も愚かで、実に「く...
数多の尊い生命が当たり前の如く失われていく「戦争」というものを考えた時、そこには、「悲惨」「残酷」などといった印象が浮かぶことと思います。しかし、本作品を読むとこれらの表現にさえ雅味を感じてしまいます。私はこの作品を読んで「戦争」というものが、人類の行為の中で最も愚かで、実に「くだらない」事なのだという印象を持ちました。 物語は太平洋戦争中の昭和19(1944)年、500名の日本軍支隊が南太平洋のバイエンの守備に就くところから始まり、そして、500名全員が聖ジョージ岬において玉砕(全滅)するまでを描いています。 作者の水木しげる氏は自身も太平洋戦争中に兵役に就いているため、前線における日本軍の有り様が生々しく描かれ、また、この事から大変説得力のある筆致となっています。 ただ、作者の独特なタッチから時折滑稽さも感じられ、それがこの悲劇を、読者がテンポ良く読める受け入れ易いものにしています。 巻末のあとがきも、読むと考えさせられる事が多い文章です。その中で作者は、この物語の90パーセントは事実だと述べています。90パーセントとはいえ、この様な事が実際にあったとは大変驚くと同時に空しくなります。 老若男女を問わずあらゆる方に、絶対に読んで欲しい作品です。
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