石の花 侵攻編(文庫版)(1) の商品レビュー
2022.6.5市立図書館 もうずいぶん前から一度は読まなくてはと思っていたが(縁のある土地の話であり米原万里の力強い推薦もあり)、ロシアとウクライナの情勢が緊張をはらむ中、KADOKAWAの戦争を考えるための電子書籍版0円販売という大盤振る舞いキャンペーンがあり、好機に乗って「...
2022.6.5市立図書館 もうずいぶん前から一度は読まなくてはと思っていたが(縁のある土地の話であり米原万里の力強い推薦もあり)、ロシアとウクライナの情勢が緊張をはらむ中、KADOKAWAの戦争を考えるための電子書籍版0円販売という大盤振る舞いキャンペーンがあり、好機に乗って「戦争は女の顔をしていない」ともども全巻ついに入手。といっても、行きつ戻りつしながら読む私のスタイルで慣れない電子書籍を読むのはやはりしんどいので、まずは図書館で借りて読み進めることにした。 初出「月刊コミックトム」(潮出版社)1983年3月号〜10月号に加筆。 旧ユーゴ内スロヴェニア地方のダーナスという小さな村(ポストイナにほど近いあたり?)の少年クリロと幼馴染の少女フィーの二人の運命を追って物語は進む。冒頭ののんびりした日常があっというまに失われ、クリロとフィーそれぞれに激流に流されていく。クリロたちの学校に新任教師として着任したばかりだったフンベルバルディンク先生はいったいどこへ行ってしまったのだろう。他にもたくさんの謎がちりばめられており、続きが気になる。 地名を見ても、強制収容所やパルチザンにまつわるエピソードを見ても、スロヴェニアに住んでいた二年間に見聞きしたこと学んだことがあれこれ思い出されて胸がいっぱいになる。ポストイナの鍾乳洞ツアーの様子などずいぶんリアルだけれど、まだ旧ユーゴだった時期にどうやって取材したのだろう。「アドルフに告ぐ」にも見劣りしない内容で、虫プロ出身、手塚治虫の後継と言われていたというのも納得。作者が早くに亡くなったことが惜しまれる。
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28pから始まる、フンベルバルディンクの台詞。 ぼくは野山を歩くのが好きなんだ……。 ヘェェ……もうひなげしが蕾をつけているぞ。 (わあほんと) きみたち突然変異って知ってるかい? (知らないね) 生物が……親の系統になかった新しい性質が、突然生物体に出現し、それが遺伝する現象...
28pから始まる、フンベルバルディンクの台詞。 ぼくは野山を歩くのが好きなんだ……。 ヘェェ……もうひなげしが蕾をつけているぞ。 (わあほんと) きみたち突然変異って知ってるかい? (知らないね) 生物が……親の系統になかった新しい性質が、突然生物体に出現し、それが遺伝する現象のことなんだ。 つまり今まで続いていたものと違う形や性質が、ひょっこり現れるんだよ。 フーホ・ド・フリースという人の説なんだが。 それ以前にダーウィンは自然淘汰を唱えていた。 これは環境の変化など生存環境の結果、適者生存して子孫を残し、劣者は子孫を残さずに亡びるということなんだ。 弱肉強食だ。 (あ……) どちらも、生物の進化がどのように行われるかという説明だ。 つまりこの花が新種をつくるのは、この花の中に変化をもたらすものがあるという説と、外からの刺激によるという説だね。 そのどちらが自然の摂理か、あるいは両方なのかわからないが、ぼくはそのことからこんなことを想ったんだ。 力と運命……。 人間は過去へも未来へも行ける。 記憶、思い出……理想、憧れ……。 それは人間の力だ! 才能だよ。 ぼくにも、クリロ、フィー、きみたちにもあるんだよ。 人間は現実の時間を歩きながら、頭の中で時を戻ったり先へ進んだりできるってことなんだ! 100万光年先の星も想い浮かべられるってことなんだ。 (なんだか空想小説みたい……) そう、空想さ。 空想できるのは生物の中で人間だけだ。 今、僕が空想しているのは、カエルの子はカエルじゃなくなるっていう空想さ。 (なんだかむずかしいわ……) (じゃあ人間の子は人間じゃなくなると何になるのさ。ドラゴンかい。ハハハハ……) ああ、もしかしたらね! (チェッ! 謎々みたいなことばかりいうな)
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読み始めるまでに時間がかかったけれど、読んでよかった。 漫画の知識だけであたかも分かったかの様に思ってはいけないのだろうけれど、日本人に遠い国の内戦について考えるという思いを向けてくれる。
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20171108読了 1996年出版。第二次世界大戦中にドイツの侵攻を受けた、ユーゴスラビアの歴史。殺戮の場面が多くて読んでいるともう勘弁と思うけれど、それが戦争の現実。多民族国家であったり隣国と地続きであったりと、日本と条件がずいぶん違うから感覚としてなかなかピンとこないユーゴ...
20171108読了 1996年出版。第二次世界大戦中にドイツの侵攻を受けた、ユーゴスラビアの歴史。殺戮の場面が多くて読んでいるともう勘弁と思うけれど、それが戦争の現実。多民族国家であったり隣国と地続きであったりと、日本と条件がずいぶん違うから感覚としてなかなかピンとこないユーゴの歴史を、少しでも知ろうとして読んでみた。米原万里の著作で知った漫画。
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戦争の複雑さを考えさせられた。敵はナチス・ドイツだけではない。 同じ民族間でも、主義主張が異なれば、明日からは敵になってしまう。 良い悪いではなく、強い力に人は自然と従っていく。 だから戦争は無くならない。 勝てば正義になるのだから、永遠に戦いが終わらない。 無限地獄だ。そうする...
戦争の複雑さを考えさせられた。敵はナチス・ドイツだけではない。 同じ民族間でも、主義主張が異なれば、明日からは敵になってしまう。 良い悪いではなく、強い力に人は自然と従っていく。 だから戦争は無くならない。 勝てば正義になるのだから、永遠に戦いが終わらない。 無限地獄だ。そうすることで自分を守るしかなくなっていく。 人は弱い。人は怖い。でも、やっぱり強い。 どんな状況でも生き抜こうとする力は、 きっと何かを変える原動力になると信じている。
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ユダヤ人を美化し過ぎてる。しょーがないか。正直この手の話はうんざりなんだけど読んどかないとと思って読んでる。ツライ。
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憲法改正や、“愛国心を育む”教育、武器輸出や領土問題など「平和」に関わる問題が山積している今こそ、多くの人に読んで欲しい名作。 私も自分の子供が大きくなったら必ず読ませたい。 物語中に少ししか出て来ない登場人物であっても、その一人一人を通して、世界に、そして身近にある矛盾が描...
憲法改正や、“愛国心を育む”教育、武器輸出や領土問題など「平和」に関わる問題が山積している今こそ、多くの人に読んで欲しい名作。 私も自分の子供が大きくなったら必ず読ませたい。 物語中に少ししか出て来ない登場人物であっても、その一人一人を通して、世界に、そして身近にある矛盾が描かれており、その都度考えさせられる。 終戦後、主人公は問う。 「あなたの考えている“平和な日常生活”とはどのようなものなのか?」 …私にとっての平和は、誰かにとっても平和なのだろうか? 「今生きている私たちの誰一人、まだ真に平和な世界などというものを経験したことがない。」 これが真実である。 これまで“平和のために”自分にできることはあまりないように思ってきた。 しかしそもそも平和とは何か? 真に平和な世界とはどのような世界なのか? そのことを懸命に考え、イメージを模索し続けることが、平和のために、と声を張り上げ、武器を取ることよりも先にすべきことだったのだ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
第二次大戦中の旧ユーゴパルチザンを描いたもの。40年以上前のものですが、ユーゴ内戦を起こすに至った要因は、第二次大戦前から何も変わっていなかったことがよくわかります。
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ユーゴスラビア クロアチア首都ザクレブ クリロ フィー 鍾乳洞 自然淘汰 適者生存 弱肉強食 謎々 スロヴェニア プラム アーリア人の奴隷 造花 平等こそ頽廃をもたらす 生存とは闘争そのものだ 凡俗はガス室送り 鉤十字=ハーケンクロイツ ハイルヒットラー 我が闘争 イヴァン
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大戦中の旧ユーゴスラビアを描いた漫画。一気に5巻まで読んだ。本棚に揃えたい。 作中では人が次々に死ぬ、老若男女、醜美も善悪も関係なく。同じ国の人が殴り合い、嬲り合い、殺し合う。途中で何度も読んでいられなくなったけれど、その度に思い直した。これは漫画だ、現実よりひどくない。 厳し...
大戦中の旧ユーゴスラビアを描いた漫画。一気に5巻まで読んだ。本棚に揃えたい。 作中では人が次々に死ぬ、老若男女、醜美も善悪も関係なく。同じ国の人が殴り合い、嬲り合い、殺し合う。途中で何度も読んでいられなくなったけれど、その度に思い直した。これは漫画だ、現実よりひどくない。 厳しい環境の中では、現実を認めた人間だけが生き残る? 人間の世界は弱肉強食? 愚衆を操ることが、国家の繁栄を導く? 本当に、人間はそうなの? 「疑問を抱き続けること」、「人間らしい優しいまなざしを投げかけ続けること」が持つ質量を、少しだけ想像することができたのは、この作品のおかげ。 人は、石の中に花を見ることができる。現実として、それが石であっても。
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