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野球狂の詩(文庫版)(4) の商品レビュー

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2022/01/23
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※このレビューにはネタバレを含みます

つい先日(2022年1月10日)水島新司さん逝去の報が流れた。彼の作品で、「一品もの」として心に残っている作品を、アマゾンで見つけることができたので早速手に入れた。 この「野球狂の詩」シリーズ、東京は国分寺に本拠地球場を構える架空の弱小球団「東京メッツ」を舞台に描かれるので、全体的におっさんくさいことは否定しようがないのだが、この巻に載っている「ウォッス10番」「ガッツ10番」を含む「10番シリーズ三部作」は、水島さんが野球選手とその周辺人物を、里中満智子さんが女性主人公やこどもたちなどを描くという、アシスタントさんに「おい、このキャラはお前が適当に描いといて」というのとは全然話が違うガチの合作だった。 新潟県の中学球界でno. 1を争った富樫平八郎と日下部了は期せずして同じ高校に入り、わずかに実力が劣る富樫は日下部の陰で二番手投手に甘んじる。ただ、彼は普段家業の魚屋を手伝うも、利き腕側の右肩を守るために左にしか重いものをかつがない。そんな富樫を、幼なじみで同じ高校の同級生、夕子はずっと静かに見守っていた。3年生の県大会決勝戦前日、床に伏せる父親に迫られ、家業を継ぐことを決意し野球関連のものを全て燃やそうとする富樫。それを見つけて止めに入った夕子は、「わたしはあなたがすき。わたしのことをどう思っているか、知りたいの。試合のあとで教えて」と言いつつ去る。 翌日、エース日下部が先発。味方が1点を挙げ1-0の展開が続くも、9回裏2アウト満塁3ボール2ストライクで、相手選手の打球を直接身体に当てた影響で日下部が続投不能となり、富樫が救援することになった。そして富樫は与えられた「たった1球」で相手打者を空振り三振に仕留めた。更に試合後は夕子を利き腕側の右肩にかつぎ上げ、前日の彼女の問いに行動で答えたのだ(以上「ウォッス10番」)。 野球マンガに少女マンガの登場人物が混ざり込むという、おそらく日本マンガ史にとっても空前にして絶後の出来事。しかも当時、同じ「講談社出版文化賞・児童まんが部門」を水島さん(1973年)と相前後して受賞するほどの大物になっていた(翌1974年)里中さんとの共作は、本当に夢のコラボレーションだったとしか言いようがない(この作品のおかげで、僕は3歳下の従妹と少し話が通じて嬉しかったことを今でも憶えている)。しかも、「野球狂の詩」全シリーズの中でも出色の感涙物語(T_T) この話は、富樫が高卒・メッツ入り後4年経って初勝利を挙げる続編「ガッツ10番」(当4巻に収録)、その後右手人差し指の腱鞘炎で不調に泣くが、看護師になった夕子の勧めで打者に転向し成功した末に夕子に結婚を申し込むという、「新・巨人の星」を彷彿とさせる展開の続々編「スラッガー10番」と続く。

Posted byブクログ