心身症と心身医学 新訂増補 一精神科医の眼

成田善弘(著者)

• 販売会社／発売会社: 金剛出版
• 発売年月日: 2025/01/30
• JAN: 9784772420884

商品レビュー

2025/03/19

1. 現代医療と死の現象
- 現代では人が病院において機械に囲まれて死を迎えるケースが大半であり、昔のように自宅で肉親に見取られることは少なくなった。
- 患者は急死せず、ゆっくりとした死を迎える過程で、医師の無力感が強く感じられる。
- 現代医学の進歩により延命が可能になったが、そのことが患者の苦痛を増すこともある。

2. 医療現場の問題
- 患者が医師とのコミュニケーションを取る機会は極めて少なく、医師は患者を無名の生物体として扱う傾向がある。
- 医師は多忙であり、患者の話を聴く余裕がないことが現実的な問題である。
- 現代医学教育は、患者を一つの有機体として見る態度を育成することに重きが置かれている。

3. 心身症の臨床
3.1 患者の心理状態
- 心身症患者は、内面的な問題を身体の症状として訴えることが多く、身体症状が主なコミュニケーション手段となっている。
- 患者は自己の病気に対して否定的態度を持ち、心身症の存在を認めながらも、自らの状態を受け入れがたいと感じる。

3.2 行動化の傾向
- 行動化は心身症患者に共通する特徴で、身体的な問題を避けるために過剰な身体運動を行う傾向が見られる。
- 患者は内的体験を語ることに抵抗感を持ち、身体的な症状を優先して訴える。

3.3 治療過程と患者の変化
- 患者Kは治療の過程で、自己の感情や思考について徐々に理解を深めていき、医師との関係を通じて成長していく様子が観察される。
- 治療の終結に際して、患者は自己の独立を望むようになり、内面的な安定を得る方向へと進む。

4. 精神科医の役割と患者との関係
- 精神科医は、心身症患者と向き合う中で、患者の内面的な問題に寄り添う役割が求められる。
- 医師と患者の関係は、相互理解や信頼の構築が重要であるが、実際の医療現場では偏見や恐れが影響することもある。

5. 医療倫理と患者の権利
- 現代医療においては、患者の自己決定権や権利の尊重が求められているが、医療者側の偏見や誤解が障害となることがある。
- 医師は、患者の苦痛や不安に対して理解を示し、適切なサポートを提供することが重要である。

6. 結論
- 現代医学は進歩を遂げているが、その結果として生じる新たな問題にも注意を払う必要がある。
- 医療者は、患者の苦痛を軽減し、心身の健康を支えるために、より人間的なアプローチを心がけるべきである。