十六の言葉

ナヴァー・エブラーヒーミー(著者), 酒寄進一(訳者)

• 販売会社／発売会社: 駒井組
• 発売年月日: 2023/09/20
• JAN: 9784911110003

商品レビュー

2023/12/25

イラン生まれ、ドイツ育ちの30代女性が主人公。
イラン人でもありドイツ人でもある。あるいはどちらでもない。移民文学としては王道のテーマである。そこに出生の秘密が絡む。

ドイツの移民の受け入れは日本とは比較にならないほど多いし、ドイツは日本より人権意識の高い国だと思うが、それでも中東の国々のそれぞれの文化や歴史を理解している人は少ないようだ。『マートブ！』が本、映画ともにヒットしたのでイランについてはそのイメージが大きいことが、この作品の中でも描かれている。(私も映画は見た。)ドイツ在住のイラン人の孤独や苛立ちがリアルに伝わる。

博士号を持っていたが共産主義者であったため投獄されたあと亡命し、ドイツで食料品店を細々とやるしかなかった父、13歳で父と結婚し、早々に別れたけれど再婚相手とも幸せになれなかった母、そして鍵と握る強烈な祖母。祖母の価値観とは全く違う現代に生きる主人公。
最後に明かされる秘密は、伏線が張られていて、なかなか巧み。