世界を分断する「壁」 フォト・ドキュメント

アレクサンドラ・ノヴォスロフ(著者), フランク・ネス(著者), 児玉しおり(訳者)

• 販売会社／発売会社: 原書房
• 発売年月日: 2017/06/23
• JAN: 9784562054183

商品レビュー

2021/02/22

トランプが不法移民対策としてメキシコとの国境に壁を作る、と言ったときにはなんと馬鹿なことを言うんだと思ったのだけど、ふと前から壁があったような...と思った時にちょうど目についたので手にとってみた。やはり随分前から壁があって場所によってはかなり立派な。そして自警団的に休暇を利用して国境警備をしている一般市民までいる。トランプみたいにtwitterで言わないだけで例えばオバマ政権のときも１６０万人以上を壁のところで捕まえて阻止している。ほぼ同じ民族、文化を有する人たちを分断する物理的な壁ってバカバカしいと思うのだが本作のようにたくさんの写真まで掲載されるとその思いが更に増す。有名どころでは３８度線、イスラエルの入植地、北アイルランド、マイナーなところだとキプロス島、モロッコが西サハラに敷設したもの、そのモロッコにスペインが飛び地を主張して敷設したもの、インドがカシミールに敷設したもの、同じくインドがバングラディシュとの国境に張り巡らせたものなど。分断のばかばかしさと不条理さを理解するにはうってつけの作品だと思います。

2018/12/09

前から気になっていた本で、図書館で借りて読みました。フォト・ドキュメントというタイトルだったので、写真が中心の少し軽めの本かと思っていましたが、現地の動向や取材の情報がふんだんに盛り込まれたしっかりとした本でした。

国境等にさまざまな政治的意図から建設される壁。「グローバルな」時代に逆行するような代物だが、技術の進歩により監視システムなどもますます強化されているようです。
多くの事例が紹介されていますが、壁の両側の地域はもともと経済的なつながり、親族的なつながりも多かったのが分断されていて、壁周辺に住む人たちの意図には構わず、建設されているということが感じられます。
本書に通底しているのは、壁は完全な分離を実現できない（パフォーマンス的象徴的なものでコストばかりかかる）、壁は憎しみやあきらめ・さげすみなど負の感情しか生まない、ということのように思われました。本書で紹介されている壁は長年にわたり設置されているもので、情勢が硬直化しているものが多いですが、両者が少しずつでも理解を含め、壁が徐々に崩れていくのを祈らずにはいられません。

2017/10/18

世界はなんと多くの壁に遮られているのか!知らないところで様々な壁が世界を分断している。朝鮮半島、キプロス島、アイルランド、バングラデシュ、カシミール、モロッコ、もちろんイスラエル、アメリカメキシコ、人間は多くの壁に苦しめられて生活している、万里の長城以来様々な時代様々な地域で、巨大な壁が作られてきた。難民の流入は長い歴史の中で、壁を作り、人種差別を作り、これを人類の発展の歴史の1部と言うのだろうか?