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刺青・性・死 逆光の日本美 講談社学術文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 講談社 |
発売年月日 | 2016/02/13 |
JAN | 9784062923484 |
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刺青・性・死 逆光の日本美
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日本の正史から弾かれた異端の男たちが皮膚に刻んだ刺青。幼い頃から刺青者に惹かれ続けた筆者は、日本における刺青の精神が「情死」に近いものであるとし、「性」と「死」をキーワードに、日本のもうひとつの精神史に切り込んでいく。 書き出しがすごい。「ある砂浜の油でりー幼い私は波打ちぎわ...
日本の正史から弾かれた異端の男たちが皮膚に刻んだ刺青。幼い頃から刺青者に惹かれ続けた筆者は、日本における刺青の精神が「情死」に近いものであるとし、「性」と「死」をキーワードに、日本のもうひとつの精神史に切り込んでいく。 書き出しがすごい。「ある砂浜の油でりー幼い私は波打ちぎわにはかない砂の城を築いていた。門、秘密の隧道、偽装の壁、陥穽としての橋、眩めくジグラート」「私はそこで誰を陵辱すればよかったのか、誰を飼育するはずだったのか。海水をひきこんだ地下牢だった。おそらく蒼ざめたエドモン・ダンテスか、鉄仮面か」。最後まで緩むことのないこのハイテンションな文章に、頭がくらくらしてしまう。 賎民の習俗として忌むべきとされたことから刑罰化し、世の道を外れたものの印だった刺青が、近世に至り、かぶき者たちによって選択的な復権行為として息を吹き返した。そこにあるのは絆の証明として消せないあかしを求める心であり、それはやがて指切りや殉死・心中へと発展していくだろう。死をもって誓いと為し、肉体を証文と見做す心の動きを同性愛と結びつけ、それこそ日本人の精神史に脈々と受け継がれてきたものであると筆者は語るのだが、本人も断っている通り、ところどころ牽強付会とも思える箇所がある。 私が特に気になったのは、挙げられている例として女郎と男性客の関係を書いたものがほとんどなのに、結論では男性同士の同性愛に着地させる点である。また、肉体関係を伴う男性たちの殉死を扱った論考でも、ホモソーシャルを書くことが目的化してしまい、そこに対する批判が一切ないのが気になった。女郎や稚児は当時の社会構造によって強者の〈モノ化〉された存在であり、そこに触れずに強者側に都合のいい「愛」だけを語るのは理想主義が過ぎる。 まぁそんなふうに論旨に乗れないところも多かったのだが、冒頭に挙げた通り、文章は本当に素晴らしいので楽しく読めた。「文化が、自然へのあらがいであるならば、刺青イコール文化ということも、論理的には可能であろう。人間が人間である自然そのままの状況に制限を課することによって、人間は文化にまで達するのであるから、たしかに刺青はもっとも本質的に文化的行為である」とか、「たしかに、刺青とは、多様的な心情の鬱屈の渦を、その混沌を、ことばにおける翻訳不能を、伝達にまで高める逆説的機能である。いな、存在がすなわち無媒介の伝達である奇蹟的擬制[読み:フィクション]なのである」とかの、圧倒的なレトリックと思考の飛躍が持つ魅力には抗えない。 最終章「死」の章に収められた二つの論は、資料の使い方も納得できるもので特に面白かった。戦国期にキリスト教が流行ったのは、兵が主君に命を預けるように、主君も兵の命を助けるためならば首を差し出すべき、という「一の犠牲で万が救われる」思想が元々日本にあったから、という説は説得力があった。そこでまた、主君を見捨てる万卒と殉死する少年の図に結びつけるのがパターンなのだが。 けれど、同性愛という「異端」の日本史を七十年代に物すというのは、今の私が考えるよりずっと困難なことだったのだろう。「秘めよ、秘められよ」と抑圧されていたのは、刺青であり同性愛であり、筆者の松田自身だったのではないかと思う。
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刺青(刺青への誘い;刺青・その秘匿と顕示;革命と聖痕―田中英光における「神」なるもの) 性(痛みと怨恨の機能;南北復活における血の論理;絵金神話の詩と真実;戯画としてのユートピア―『曼陀羅』におけるエスノロジー) 死(一人による犠牲死;性と死の冥婚)
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