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シンガポール「多人種主義」の社会学 団地社会のエスニシティ
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 世界思想社 |
発売年月日 | 2011/04/05 |
JAN | 9784790715177 |
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シンガポール「多人種主義」の社会学
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シンガポール「多人種主義」の社会学
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商品レビュー
4.5
2件のお客様レビュー
団地という側面から、シンガポールの多人種主義を映し出す良書。 民族性を強調すればするほど断絶が生まれるという点と、それぞれ「違う」民族が平等にやっていくという点が、英語教育やHDB等で絶妙に両立しているわけで、その大きな構成要素について掘り下げた内容になる。 そもそも多人種主義...
団地という側面から、シンガポールの多人種主義を映し出す良書。 民族性を強調すればするほど断絶が生まれるという点と、それぞれ「違う」民族が平等にやっていくという点が、英語教育やHDB等で絶妙に両立しているわけで、その大きな構成要素について掘り下げた内容になる。 そもそも多人種主義というのがシンガポールの建国理念であることも念入りに説明され、単純に同じようなやり方を日本で適用したりするのは根本的に不可能である点を強く感じる。 また、本書の特徴として、国家的な強制力もあって見えている国民アイデンティティ・人種アイデンティティの向こうの、インフォーマルなアイデンティティについて掘り下げていることがある。 前半の先行研究のまとめに関しては、興味深くもありつつも退屈さも否めないのだが、後半のフィールドワークが傑出している。 2つの古い団地について聞き取りを行ったものだが、HDBという場で、想像をはるかに超えた形で多言語・多民族の状況下で、コミュニティ結束が強く表出するのを聞き出している。 特に、高齢者の方言利用の割合の多さ、リンガ・フランカとしてのマレー語(!)など、通常シンガポールに住んでいても可視化出来ない部分は衝撃。英語・華語の使用頻度の低さには驚きを隠せない。 また、このような形で「強制的に」一緒に住まされることで、場に適応して出来上がった強いコミュニティを、『強制的な」HDB移転によって壊されるという政府に翻弄される姿というのも興味深い。 本当にたて直す必要があるわけでもない我が家を強制的に奪われ移転させられても、シンガポールの人は強くは文句を言わない。 政府は、そのようにして、人々の大切なモノを人質にとってこの素晴らしい多人種主義を運営しているし、それは完璧に成功しているのだ。差別も少ないし、平和だし、人々は互いを受け入れあって暮らしている。 住空間という人の生活と強く結び付いたライフそのものも政府に操られる、夢の国である。テレビも新聞も政府の持つメディアコープ一社しかないというのもこの本で知ったが、本当に見事。「極めて優秀な政府」にデザインされ、同じようなおもちゃの団地に住むことになり、翻弄されながらも受け入れあって生きるこの南の島の人たちの生活が、本当に愛おしいなと思う。
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推薦理由: 多様な人種によって構成されているシンガポールという国を政府がどのように統治しているのかを、団地社会を研究することで考察している。本書は著者が自らの博士学位論文を書き直したものであるので読み辛い部分もあるが、現地での調査研究と考察の部分だけを読んでも大変興味深い。シンガ...
推薦理由: 多様な人種によって構成されているシンガポールという国を政府がどのように統治しているのかを、団地社会を研究することで考察している。本書は著者が自らの博士学位論文を書き直したものであるので読み辛い部分もあるが、現地での調査研究と考察の部分だけを読んでも大変興味深い。シンガポールという国を違った目で見る事ができる。 内容の紹介、感想など: シンガポール共和国は、1965年に成立して以来現在に至るまでPAP(人民行動党)が一元的支配を貫徹している。シンガポールは多数の人種によって構成されている国家であるが、政府は「多人種主義」政策の下、公認する人種を「華人」「マレー人」「インド人」「その他」の4つの人種に定め、国民にはこれらの何れかに属することを強制し、国民をこれら4人種別にはっきりと分け隔て、その多様性を強調することによって国家形成を実現しようとしている。シンガポールは単に多人種社会であるというだけではなく、国家権力の下で多人種主義に基づく政策が、積極的かつ徹底的に行われている。著者はシンガポールの多人種主義についての社会学研究を進めるにあたり、この国が世界に類を見ない総団地化社会であることに着目し、標準化と差異化が多人種主義の下で実際にどのように実現されてきたのかを、HDB(住宅開発庁)の政策と、HDB団地戸に居住する人々の生活を子細に観察、研究することで考察する。 シンガポールの一般の人々は政策によりHDB団地戸以外に住宅の選択の余地が無く、殆どの国民がHDB団地戸に居住している。HDB団地には様々な政府諸機関のオフィスや施設があり、政府とPAPの権力を強化するにあたって重要な手段となっている。団地の住民関係は人種関係として規定され、各団地棟で各人種別の割合を細かく定める事でコントロールされている。 著者はある団地の団地棟と、別の団地の団地棟とホーカーセンターが再開発の名目のもとに強制取り壊しになった事例の調査研究を行い、その何れの事例でも人種別の関係ではない住民同士の有意義な近隣関係や人種別に分断されない飲食関係が成立していた事が、政府が標準とした多人種主義から逸脱していたために、コミュニティーを解体して再標準化する目的で取り壊されたものであると考察している。 シンガポールは総団地化を実現し、更に団地の建設と取り壊しを推し進める事によってPAP政府の一元支配が貫徹され、多人種主義が実践されているのである。 本書には、現在シンガポール住民である私達にとって、見過ごすことのできない現実が描かれている。
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