出版のこころ 布川角左衛門の遺業

小林恒也【著】

• 販売会社／発売会社: 展望社
• 発売年月日: 2011/01/29
• JAN: 9784885462276

商品レビュー

2021/03/03

岩波書店の編集者として西田幾多郎を担当したり、三木清の遺体を引き取りに行ったりしたという布川角左衛門であるが、本書の主題は岩波書店を退職した後のことである。
主に定年退職後の、出版界全体に対する貢献が書かれている。
読書推進運動、国会図書館への納本制度、著作権法改正への関与や出版契約書雛形の作成、出版倫理綱領の制定、全国共通図書券の立ち上げ、『日本出版百年史年表』の編集、といった事柄で中心的な役割を果たしたほか、編集者や校正者の育成について教材を作成し、体系化を図った。
そういったプロセスを整理してまとめているので、出版業界人にとっては知って損のない内容だと思う。
ただ、業界的な貢献度は絶大であるが、いかんせん地味な話である。なので派手な伝記とはなっておらず、退屈ともいえる。それは致し方ない。

2011/09/02

出版業界に残る偉業を成し遂げた男の伝記です。僕としては正直な話、心にぐっと来るところはあまりなかったのですが、仕事に対する厳しさというものは行間から伝わってくるような気がしました。

この本はもう一度読み直して、さっきやっと最後まで通読した状態で、リベンジするつもりでこの文章をつづっております。この本によるとこの布川角左衛門という方は岩波の重鎮で、出版界でずいぶんと功績があった方みたいですね。どうでなければこうして伝記も出版なんされるわけがない、か。作中で最も感銘を受けたのはこの方のおっしゃるところの
「ゆっくりいそげ」
でしょうか。

これはいい言葉ですね。僕も前にとある仕事をしていた会社でこれとまったく同じことを言われたことがあります。やはり違う職種でも相通じるところはあるということなのでしょうね。ほかにも、作者は法政大学に在学中に校正の仕事をやりながら書生として住み込み生活をしているのですが、これも自身の経験から、若いころに一回やっておくと、その後の人生で大きな糧になると思います。

今、電子書籍などで業界に再編の嵐が吹き荒れておりますが、出版界に身をおいている方は、ぜひとも彼の志をついでがんばってほしいですね。