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炎の中、娘は背中で… 3月10日、夫・子・母を失う 語り継ぐ東京大空襲 本の泉社マイブックレット
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 本の泉社 |
発売年月日 | 2008/03/10 |
JAN | 9784780703696 |
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炎の中、娘は背中で…
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(2008. 03.23読了) 「東京大空襲60年 母の記録」森川寿美子著、と同様、1945年3月10日の東京大空襲で身内を失いながらも、生き延びた人の手記です。 鎌田十六さんは、1月16日生まれなので、十六(とむ)と名づけられたそうです。女性なのですが、名前のために男に間違えら...
(2008. 03.23読了) 「東京大空襲60年 母の記録」森川寿美子著、と同様、1945年3月10日の東京大空襲で身内を失いながらも、生き延びた人の手記です。 鎌田十六さんは、1月16日生まれなので、十六(とむ)と名づけられたそうです。女性なのですが、名前のために男に間違えられるそうです。 長野市で生まれ、東京に出て会社勤めをしていて、八歳年下の茂さんと結婚し、浅草の蔵前二丁目に住んでいました。母のうめさん、夫の茂さん、生まれて7ヶ月の早苗さんの4人家族でした。夫の茂さんは、徴兵の招集日に、風邪を引いて即日帰京になったため一緒に暮らしていました。 三月九日夜は、月が明るく照らしていました。10時半ごろ警戒警報のサイレンで、一旦防空壕に避難したのですが、静かになったので自宅に戻り、横になってまもなく、高射砲のすごい音が続けざまに響くので、起きてみるとあちこちに火の手が上がっていました。 敵機が親子焼夷弾を落とし、落ちたところが火の海になってゆきました。 あちこちで上がった火の手は、風にあおられて、どんどん広がり、消せる限度を越えています。隣組で相談し、避難することにしました。 71歳の母には、夫が付き添い、十六さんは、早苗さんを背負って、避難しました。避難したところは、隅田川のほとりのごみを船で運ぶための入り江になっているところでした。三方がコンクリートに囲まれたところなので、安全と思われました。火の手が迫ってくると火の粉や煙で、いたたまれなくなってきたときに、後ろにいたはずの夫が見えないので、安全な場所を探そうと、母を置いて、5,6歩進んだところで躓いて、川に落ちてしまいました。夫もあとから飛び込んできました。母は上に残したままでした。 火からは逃れられたのですが、水が冷たくて、感覚がなくなってゆきます。川に横倒しになったごみ車に、乗っている人がいたので、頼んで、十六さんと子供を上に上げてもらいました。そのまま気を失ったようです。気がつくと朝になっていました。 川から助け上げられて、避難場所の国民学校に行き、保健婦さんに背中の子供を見てもらったら、「赤ちゃんは、もう亡くなっています」といわれました。夫や母を捜して川辺に行って見ましたが誰もいませんでした。学校に戻ったら、親戚の方が探しに来てくれたので、親戚宅へ行きました。毎日夫と母を捜しましたが見つかりません。避難していた入り江に連れて行ってもらい、夫が立っていたあたりの水の中を探してもらったら、間違いなく水の中に夫は倒れていました。夫の死体を引き上げてもらい、子供と一緒に火葬にしました。 母が最後にいた辺りの焼けた遺体の骨を拾ってみたら、焼けてから六日も経っているのに、まだ暖かく、お骨の下から、母が身に着けていた真綿で作った背中あてが見つかりました。 その後、再婚の話がいくつかありましたが、結婚する気にはなれませんでした。 一周忌の3月10日に、犠牲者の遺骨が葬られた上野の山に参詣しました。その際、上の駅前で見かけた戦争孤児にびっくりしました。 そんなことから、戦災孤児たちの養護施設で働くようになりました。あちこちの養育院に転任させられながら働きました。40歳のとき、石神井学園の園長さんから声をかけられ、70歳までそこで働きました。1983年でした。 現在95歳で、91歳の妹さんと暮らしています。 (2008年3月26日・記)
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