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流砂の声

日野啓三(著者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 読売新聞社/
発売年月日 1996/02/18
JAN 9784643960075

流砂の声

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2009/10/18

ホンモノを求めて内に閉じこもろうとする心性と、よりいっそう外に開かれねばならない現実との二重性が、一種悲劇的な様相でこの国の政治も人々の心をも引き裂き始めている、ということだ。そしてこの分裂を自分のものとして意識化することが求められている。 かつての光景の懐かしさからだけでは多...

ホンモノを求めて内に閉じこもろうとする心性と、よりいっそう外に開かれねばならない現実との二重性が、一種悲劇的な様相でこの国の政治も人々の心をも引き裂き始めている、ということだ。そしてこの分裂を自分のものとして意識化することが求められている。 かつての光景の懐かしさからだけでは多分ない。自分の心の地肌にいつのまにか荒涼としみついたある感触、ある気分への懐かしさからだ。時間的な過去ではなくいわば自分自身の内部の深みへの、空間的な懐かしさである。あるいは未来への懐かしさでもあろうか。 長く深く心の奥に残る記憶もそういうものではないか。とくに深い利害関係もなかったのに妙に心に残っている人、あるいは日常よく知っている友人や家族たちでも、とくに意味もないさり気ない動作や表情や短い言葉が、いつまでも記憶の中を行き続ける場合が多い。多分こちら側の私たち自身の心の奥に底流している何か無意識の情動が、ひとりで勝手にそれらの偶然の動作や風景と結びつくらしい。 「見よ、メッキした空に」北島 率直に言うけれど、そのとき私が身内に感じたのは”虐殺の興奮”に近いものだった。古今東西 で終わることのない様々の大虐殺事件を思った。人類の中にはそんな忌まわしい血が、少なくと も男の血の中には流れ続けていることを感じた。人間の最も奥深い感情は、この世界(宇宙)の中 での孤独と恐怖だが、男の方がその恐怖をより強烈な興奮でまぎらわす誘惑に弱いのだろう。 冬至の日を境に衰退から再生へと切り換わる光の感触は、少なくとも高緯度地域において基本的 に劇的ではないだろうか。思想や文化の違いを越えて、それはわれわれの直接的な近くに明らか なことだ。そしてその知覚のよろこびは、まさにわれわれのはるかなる遺伝子的記憶に属して深 い。 信念がわれわれの心の奥にしみついている不安から再生への願いの日であるならば、天なる光の 劇に改めて感覚と心を開いてよいように思う。たとえベランダに、居間のガラス戸にわずかに射 しこむ日ざしの変化であっても。すべての上に等しく天はひとつである。

Posted by ブクログ

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