ブラウン神父 集英社文庫世界の名探偵コレクション10:3

ギルバート・ケイス・チェスタートン(著者), 二宮馨(訳者)

• 内容紹介: 内容:飛ぶ星. ペンドラゴン一族の滅亡. ム-ン・クレセントの奇跡. マ-ン城の喪主. 古書の呪い. ドニントン事件
• 販売会社／発売会社: 集英社/
• 発売年月日: 1997/08/20
• JAN: 9784087485585

商品レビュー

2010/05/28

本格ミステリを語るう…

[文庫ＯＦＦ]

本格ミステリを語るうえでは避けては通れない名探偵、ブラウン神父の短編集。

2010/05/28

ブラウン神父ものの佳…

[文庫ＯＦＦ]

ブラウン神父ものの佳編を収録した短編集。短編集未収録の共作『ドニントン事件』が収められています。

2023/12/15

集英社文庫の世界の名探偵コレクション3。ブラウン神父の短編6作品を収録。知名度は低いがホームズに並ぶ推理もの。

「飛ぶ星」「ペンドラゴン一族の滅亡」「ムーン・クレセントの奇跡」「マーン城の喪主」「古書の呪い」「ドニントン事件――ブラウン神父最後の事件」を収録。

ミステリーの門外漢としてはこれまでほとんど知らなかったのだが、このブラウン神父はホームズやポアロに匹敵するほどの名作シリーズらしい。知名度がやや低い理由として本書のあとがき解説では、人生の重荷や深いところを扱う大人向けの内容であること、映像向きではなく映画化作品がほとんどないことがあげられている。読んでみてなるほど……だ。推理もののトリックなどが優れているはものの、人間存在の深いところにある闇を、神父の赦しという光によってかろうじて少し救われるような、重みを残す読後感を感じることが多かった。これは小中学生、高校生あたりには退屈に思えるかもしれない。しかし大人にはきっと響くと思う。

しかしその中でも、ちょっと笑えるくらいの傑作が「古書の呪い」だ。オカルトど直球な入りから引き込まれ、人間心理のすきをついた、非常に考えさせられもするという、あざやかな結末に舌を巻く一編。

問題篇と解決篇に分かれた「ドニントン事件」は、ちょっと複雑でわかりにくいところもあるのだが、犯罪心理の奥深さと人間の光と闇がみれる、中編ながら読み応えある大作。

全編通してトリックの秀逸さと、倫理や人生観、宗教的慈悲を問う神父ならではの結末が、犯罪を取り扱った小説によくマッチしていると思った。犯人を許す姿はホームズに通じるところもあり、名作シリーズとして、三大名探偵といわれても違和感なく受け入れられる。まだまだ作品数があるようなので今後も触れていきたい。