戦争と漫画 焦土の記憶(文庫版) の商品レビュー
結構そうそうたる漫画家がそろっています。 テーマは明るくはないですが、ラストの作品の読後感は悪くなく読み終えられました。
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全3巻のラスト。 野坂昭如・原作、滝田ゆう・画 『火垂るの墓』 手塚治虫 『すきっ腹のブルース』 つげ忠男『懐かしのメロディ』 つげ義春『窓の手』 水木しげる『国際ギャング団』 赤塚不二夫『点平とねえちゃん』 あすなひろし『林檎も匂わない』 村野守美 『垣根の魔女』(第10話「...
全3巻のラスト。 野坂昭如・原作、滝田ゆう・画 『火垂るの墓』 手塚治虫 『すきっ腹のブルース』 つげ忠男『懐かしのメロディ』 つげ義春『窓の手』 水木しげる『国際ギャング団』 赤塚不二夫『点平とねえちゃん』 あすなひろし『林檎も匂わない』 村野守美 『垣根の魔女』(第10話「御身大事に・・・・」) うらたじゅん『発禁・櫻御前』 ★ さそうあきら『菜々子戦記』 谷口ジロー『百年の系譜』 ★ 魚乃目三太 『戦争めし』(第3巻其の弐「たんぽぽの珈琲」) 樹村みのり『星に住む人びと』
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山田英生・編『戦争と漫画 焦土の記憶』ちくま文庫。 3ヶ月連続で『戦争と漫画 戦地の物語』、『戦争と漫画 銃後の物語』、『戦争と漫画 焦土の記憶』と連続刊行された『戦争と戦後』の日本社会と日本人を描いた漫画のアンソロジー全3巻の最終巻。 今年は終戦から80年を迎え、昭和100...
山田英生・編『戦争と漫画 焦土の記憶』ちくま文庫。 3ヶ月連続で『戦争と漫画 戦地の物語』、『戦争と漫画 銃後の物語』、『戦争と漫画 焦土の記憶』と連続刊行された『戦争と戦後』の日本社会と日本人を描いた漫画のアンソロジー全3巻の最終巻。 今年は終戦から80年を迎え、昭和100年にあたる。時代は移ろい、国民が耐乏生活に苦しみ、明るい未来など見出だせなかった戦前戦中の動乱の時代、食糧や物資不足に喘ぎながら進み続けた戦後の復興期、高度経済成長期からバブル期といった華やかな時代を経て、大災害や原発事故、感染症のパンデミックに苦しめられる疲弊した時代へと大きく変貌してしまった。 未だに敗戦国として米国の支配を甘んじて受け続ける日本国民。戦争は確かに罪深いことではあるが、図らずも戦争で犠牲になった日本国民の存在すら忘れ、日本人としての気概を失い、腑抜けたような今の日本社会には残念な思いしか無い。 先日行われた広島の原爆記念式典では現首相と元首相が揃って居眠りを漕いていたのには愕然とした。そんな現首相が世界の核廃絶のために主導していくなどと発言していたが、相変わらず日米安保条約という核の傘に隠れていることには矛盾を感じる。 野坂昭如・原作、滝田ゆう・画 『火垂るの墓』。戦争の悲惨さ、当時の日本人の苦難や苦労、人間のエゴ、兄妹愛を描いた野坂昭如の自伝的傑作小説を滝田ゆうが味のある絵で漫画化した名作。何時の時代も一部の権力者の暴走に苦しめられるのは市井の人びとなのだ。 手塚治虫 『すきっ腹のブルース』。手塚治虫の自伝的な漫画。終戦直後、食糧も物資も無く、腹を空かせながら漫画を描く主人公。昭和1桁生まれで6人兄弟の父親も、兎に角食べる物が無く、何時も腹を空かせていたと話していた。その反動からか父親は食には五月蝿く、身体に悪い物ばかり好んでいた。 つげ忠男『懐かしのメロディ』。昔懐かしい『ガロ』に掲載された漫画。戦後の立石に蔓延っていた無頼漢の京成サブの思い出。昔は戦争の犠牲者なのか、こうした無頼が街には必ず居た。 つげ義春『窓の手』。窓枠に生えた白人女性の2本の手を巡るシュールな物語。異国に取り残された進駐軍女性とアメリカ軍のスパイとなった日本人の恋愛。『ねじ式』のような完成度は無いが、つげ義春らしい。 水木しげる『国際ギャング団』。戦後を舞台にした奇妙な話。アパートの1室で紙芝居の絵を描く主人公の隣人が国際ギャング団のメンバーだったという話。主人公の友人が復員兵として募金を集める描写があるが、昔は祭りなどで街が賑わう時、傷痍軍人がハーモニカを吹きながら、募金を行う姿が見られた。 赤塚不二夫『点平とねえちゃん』。戦争の匂いは感じられない姉と弟の物語を描いたストーリー漫画。深読みすれば、点平が偶然知り合い、仲良くなった病弱のコロッケにいちゃんは原爆の被曝症だったのかも知れない。 あすなひろし『林檎も匂わない』。あすなひろしの素晴らしい画力で描かれるメッセージ性の強いSFのような、ホラーのような漫画。広島に落とされた原爆で人生を狂わされた1人の男。 村野守美 『垣根の魔女』(第10話「御身大事に・・・・」。特攻で一人息子を亡くした年老いた母親の物語。特攻に出撃する前に母親に宛た一枚の葉書。 うらたじゅん『発禁・櫻御前』。出征前に知り合った女性の面影を引き摺る男の物語。戦争から戻った男は極上の酒を密造し、ラベルの絵を描く。 さそうあきら『菜々子戦記』。現代の女子高生が主人公。彼女はあることを切っ掛けに祖父がB級戦犯として死刑になっていたことを知り、衝撃を受ける。 谷口ジロー『百年の系譜』。戦前、戦中、戦後と激動の時代を僅かな偶然や家族の多大なる努力により、百年もの間、絶えることの無かったシェパード犬の系譜。谷口ジローという天才漫画家の筆で素晴らしいストーリーが生き生きと描かれる。 魚乃目三太 『戦争めし』(第3巻其の弐「たんぽぽの珈琲」)。喫茶店を営む夫婦が夫の出征を前に最後の珈琲を味わう。それから72年、寡婦となった妻は戦地から送られてきた夫からの最後の葉書に書かれていた言葉の真の意味を知る。 樹村みのり『星に住む人びと』。まだ人生の始まりという僅か5歳で亡くなった母親の姉。高度経済成長期にハイジャックや学生運動、内ゲバなどの様々な事件が起きるが、5歳で亡くなった少女は純粋無垢のまま。 本体価格940円 ★★★★★
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