ほくほくおいも党 の商品レビュー
「宗教2世」が社会問題(認識)化して少し経つが、宗教に限らず「〇〇2世」の問題は、ある。親が何かしら熱心で、それがラジオ体操だとか英会話ぐらいならまあ受け継いでもいいのだが、思想信条のことになるととても厄介だ。 宗教や政治、何かしらの市民活動だったとしても、親の押し付けのなか...
「宗教2世」が社会問題(認識)化して少し経つが、宗教に限らず「〇〇2世」の問題は、ある。親が何かしら熱心で、それがラジオ体操だとか英会話ぐらいならまあ受け継いでもいいのだが、思想信条のことになるととても厄介だ。 宗教や政治、何かしらの市民活動だったとしても、親の押し付けのなかには度を越した、普通に生きる権利を奪うようなものもある。しかも親が束縛しているという意識が薄い(正しいと信じてやまない)と、長期的に深刻になる。 当著は「活動家2世」と呼ばれる若い人たちがメインキャストの物語。左翼政党の専従職員となったのち、何度も選挙に出て落選を続け「顔はよく見る選挙好きの人」「風変り、というか危ない人」と覚えられる、そんな親に考えを刷り込まされたり党加入を無理強いされる、2世たち。 思えば私の周辺にも左翼系で「選挙によく出るおじさん・おばさん」がいた。地方議員になれたと思いきや突如国政選挙にも出て落選と、あれは何だったんだろう・・・そんな彼らにも家族がいただろうし子供もいたかもしれない、そして親を見てどう育ったのか・育てられたのか、今は想像し得ない。 当著の登場人物も、左翼的な思想が直ちに誤りだと思っているわけではないようだった。どちらかというと思想よりも「家族を犠牲にして(放棄して)活動にのめり込む」親に翻弄されることに悩まされているというか。 選挙や活動のために財産や自分たちの時間を提供しなければいけない、そんなのはおかしい、私だったらブチ切れたいところだ・・・が、子供にとって親は色んな意味で巨大であり壁でもあり、反発心を言葉や行動に移せるかというと、大体の「力弱き」子供は挫けてしまうのでは、と思う。 「ほくほくおいも党」というタイトル、シリアスな内容に似つかわしいとは言えない明るい装丁。これを眺めて、実在する共産党もいつからか赤色以外でポップな「若向けの」ポスターばかりになったことを思い出す。ただ、実際にデモを組んだり集会に出向いたりする人たちは「疲れた中高年」が目立つ。 保守に抗う若い世代が直ちにレフト席に移るわけではない現状下、どうすれば左派的な思想と方向性に共感してもらえるのか、真剣に次世代の声に耳を傾ける態度が指導側に欠けているのでは、という思いに至った。 まさに「お父さんとの対話の要求」に応えられるのか、と。
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●政治について考えたい方、必見の今オススメの1冊● 表紙を見る限り、「読書の秋?」いや、「食欲の秋」もいいな〜!と思って手に取った。 読み始めると、まさかのテーマは政治と家族をテーマにした物語で、想像とは異なり、ちょっとビックリした! 絶えない活動家2世たち。 「活動家2世」という言葉は、あまり聞かないが、「宗教2世」に似たようなものだと本作を読んだ限りは思った。 主人公の千秋自身、共政党に入党したかったわけでもない。 (やはり、これはまさに親ガチャ失敗というのか…。 そんなことで、日々、父親にコンプレックスを抱えて生きていた。) 「共政党」の支持者ははなかなかいないこともあり、共政党員の家族や2世たちは、生きづらさを感じているケースが多い。 「ほくほくおいも党」(自助サークル)は、千秋にとって同じような悩みを抱える者同士、会話ができる。 それは、彼女にとって、初めてで新鮮な経験だった。 自助サークルの存在を知って、このようなサークルは、生きづらさを軽減させるためには、かなり重要だと感じた。 今の日本のは、連立政権をどこと組むのかが話題になっている。 日本政治の概念として、リベラル、保守、左派、右派などがある。 そこで、どの政党が、どの派に所属しているのかを現在の政党を調べながら読んでみた。 (そうすると、いわゆる左派である「共政党」への理解が深まった気がした。) ここまで、現実、上手くいくとも思えない。 しかし、流石、物語といえるだろう。 最終的に、千秋と父の念願だった対話が叶い、家族の愛を感じられたのはよかったなぁと思った。
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活動家二世やここ数年問題になっている宗教二世と呼ばれる立場の人たちの生きづらさが、実際問題として親と対話することですべて解決する訳ではないけれど、だからってそれを理由に言葉を奥に抱えたままでは分かることと分からないことが二人の間にあることも分からないし、何よりしないことで分かるこ...
活動家二世やここ数年問題になっている宗教二世と呼ばれる立場の人たちの生きづらさが、実際問題として親と対話することですべて解決する訳ではないけれど、だからってそれを理由に言葉を奥に抱えたままでは分かることと分からないことが二人の間にあることも分からないし、何よりしないことで分かることが見つかることは無い。どちらかの要求だけを相手に飲ませるような半ば暴力の為ではなく、ちょうど中間の地点に日向を一緒につくり合う為に言葉が使われる世界であって欲しいと私は思う。
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かわいい表紙でうっかり読んでしまったけれどしんどい話だった。宗教.活動家二世の苦悩。本人の自己責任でどうにかなる問題ではない『親ガチャ失敗SSランク』。夫婦が離婚出来る様に、親子関係も子どもから切れる様に法改正してあげてほしい。
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表紙からほっこり系かと思ったら、がっつり重たいお話でした。政党員に限らず、自分は絶対正しい!って人の横にいるのは疲れるけど、それが親となると大変だな。活動家二世の苦悩について知ることができました。
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二世あるあるとひきこもるお兄さんと。終わり方が明るいんだかそうじゃないんだか。 親が、信念からくる概念を広げる仕事の職業規範が生活にまで侵入してくる職に邁進していること、ととらえると宗教者も政党政治も教育も共通点があるのかもしれない。その割に教育者の話って出てこないよなあ。
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これは刺さる人には刺さる本だなぁ。 そして私は刺さる人だったよ。 ちょっと違うけど、私も千秋と同じような立場で、いわゆる宗教二世(正確には三世)。 千秋や健二ほど放っておかれたわけではないけど、自分に選択の自由がなかった点や、いろんな会合に連れてかれたり、思想を学ばされた点ではかなり境遇は似ている。 たしかに親は愛情をベースに自分の子どもを二世・三世にしてるのかもしれない。 でも私は絶対に反対。法に触れないかぎり、すべての選択権は本人にあるべき。 というか、父親も母親も千秋の言葉を受け入れてなかったでしょ。あれは対話じゃなくて意見のぶつけ合いだよね。 そして、健二は自分の言葉を持てていない。だから暴力に頼ろうとする。 早く自分の言葉を持って、言葉によって状況を打開できるようになったらいいなと思った。 そして一方で、健二がネットでアンチコメントを書いてる様子、心の動きがかなりリアルで、図らずも少し共感してしまった。よくないことだけど、ああするしかなかったんだろうなと思ってしまう。 だからこそ、やはり自分の言葉で主張するって大事なことなのよね。 途中の話(第二章、第三章)は位置付けがよくわからなかった。 和樹、康太郎など家族以外の人から見た父親を描いてるということなのかな? 千秋の父親みたいな人って、外面はいいからねーという健二が書くようなアンチコメントみたいな感想しか出てこない。 自分がけっこう捻じ曲がってるんだなという気づきに恐怖…。 あまりに共感できすぎて読むのちょっとしんどかったけど、あんまりこういう類の話は人とできないので、レアな読書体験でした!
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●読前#ほくほくおいも党 『救われてんじゃねえよ』で、シリアスな社会問題への表面的で薄っぺらな反応を嘲笑うような感性に魅力を感じ、この先の著作が楽しみになった上村さんの新作。ヤングケアラーの次は、宗教二世ならぬ活動家二世の主人公、どんな人生を歩んでるのだろう https://am...
●読前#ほくほくおいも党 『救われてんじゃねえよ』で、シリアスな社会問題への表面的で薄っぺらな反応を嘲笑うような感性に魅力を感じ、この先の著作が楽しみになった上村さんの新作。ヤングケアラーの次は、宗教二世ならぬ活動家二世の主人公、どんな人生を歩んでるのだろう https://amzn.to/4mGVzs2 ●読前#ほくほくおいも党 実体験と大学卒業制作がベースになった作品。宗教二世ほど認知されてない活動家二世の生きづらさが伝わってきて楽しめた。卒業制作時から変化ないタイトルは、「外側は熱すぎて触れないけど中はほくほくで甘いおいも」が感じられる内容にぴったり! https://amzn.to/4mGVzs2 ●心に響いたフレーズ&目次 #ほくほくおいも党 https://mnkt.jp/blogm/b250716b/
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政治に邁進する父親とその二世の娘、息子のすれ違いのような日常にもどかしさや切なさを感じた。有権者ばかりを見るのではなく、身内の苦悩を知ってほしい。そして家族同士で対話したいという切実な要求はもっともな事だし、目の前の弱者とは誰なのか、娘、息子のSOSは読んでいてハッとさせられた。...
政治に邁進する父親とその二世の娘、息子のすれ違いのような日常にもどかしさや切なさを感じた。有権者ばかりを見るのではなく、身内の苦悩を知ってほしい。そして家族同士で対話したいという切実な要求はもっともな事だし、目の前の弱者とは誰なのか、娘、息子のSOSは読んでいてハッとさせられた。政治的なトピックスも散りばめられていて作家さんの観察力が素晴らしいと思った。
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Amazonの紹介より お父さんに家族との対話を要求します! 高校三年生の千秋は、父と兄との三人暮らし。左翼政党員の父は、勝てない選挙に出続けて六年。兄は父の出馬をきっかけにいじめられ、引きこもりになった。母は同じころ家を出た。政治と政党に没頭し話の噛み合わない父だが、千秋は対話...
Amazonの紹介より お父さんに家族との対話を要求します! 高校三年生の千秋は、父と兄との三人暮らし。左翼政党員の父は、勝てない選挙に出続けて六年。兄は父の出馬をきっかけにいじめられ、引きこもりになった。母は同じころ家を出た。政治と政党に没頭し話の噛み合わない父だが、千秋は対話をしたいと願う。 すれ違う三人の家族を中心に、左翼政党員を親にもち風変わりな名前の自助サークルに集う「活動家二世」たち、震災のボランティアをきっかけに政治活動に出合う青年、高校の生徒会長選挙のドキュメンタリーを撮ることで新たな視点を得る高校生──それぞれの姿を家族の物語とともに描く全6話。 前作では、ヤングケアラーという比較的重めな話なのに、登場人物同士のコミカルな会話が印象的で、そのアンバランスさが独特の世界観を放っていました。 今回の話では、親が政治家で苦悩する子供の物語になっています。「活動家二世」ということで、親が敷いたレールを子供は通らなければならないのか。 親と子の会話に重々しい空気がありつつも、ほのかにコミカルさがあって上村さんならではの世界観がありました。前作ほど張りつめた空気はないものの、暗めと明るめのアンバランスさが独で楽しめました。 表紙から想像するのは、父親だけでなく子供も出馬!?とか積極的に父親と対決する!?といった強気な展開でした。しかし、そうではなく、苦悩しながら少しずつ立ち向かっていくといった表紙のイメージとは違う内容だったので、ちょっと意表をつかれました。 その他にも、様々なケースの親子関係が紹介されています。章が変わるごとに主人公が変わる群像劇になっています。親に言われるが故に、いじめにあって引きこもりになった人生があれば、成功した人生もあります。 ただ、子供の決断を強制的に決めるのではなく、多くの選択肢を与えることが大切であると感じました。 親から言われなくても、子供は色々考えています。 小説をきっかけに、色んな考えを持ってほしいなと思いました。
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